蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

泡坂妻夫『ダイヤル7をまわす時』

ダイヤル7をまわす時 (創元推理文庫) 作者:泡坂 妻夫 東京創元社 Amazon 著者といえばの逆説的な推理法もあるにはあるが、メインどころでガツンと来るよりは、サブに回っていい味を演出する方向性で、比較的、正攻法な手法で作られたミステリが多い。どれも…

書いた小説について&小説を書いてみて

初めて長編小説を投稿した。ジャンルは一応、本格ミステリ。 kakuyomu.jp 書いたものについて 一回くらいは、本格ミステリを書いてみたいということで、何とか書いた。この作品の原型みたいなものは、高校生の時にノートに書いてたやつにさかのぼる。 当時、…

これは、すずめの戸締りについての書きかけのノートというか、一部シーンの「断絶」の評価のされ方について、以前のほうが物語の中でよりくっきりとやってるんじゃないの? という思いから書き留めていたもの。なかなか全体の記事が書けそうにないので供養み…

連城三紀彦『黒真珠』

黒真珠-恋愛推理レアコレクション (中公文庫 れ 1-4) 作者:連城 三紀彦 中央公論新社 Amazon 連城三紀彦の未収録短編二十四編(現在確認された分)のうち、十四編を収めた短編集。比較的分量のある七編と掌編七編を前後半に分けて収録している。 連城三紀彦…

最近、テレビアニメをなんとか観だして、『チェンソーマン』『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』『ぼっち・ざ・ろっく』を最後まで見終えることができた。今現在は『よふかしのうた』と『怪人開発部の黒井津さん』を観ている(この記事を書き始…

1月1日ということにしておいてください。

元旦はアニメウマ娘の一期・二期の一挙を観てなんか終わった。とりあえずウマ娘は面白いので問題はない。二期の研ぎ澄まされたプロットはもちろん素晴らしいが、一期のポップな楽しさも良いし、なによりやはり事実を基にしつつもアニメ的、物語的な楽しさを…

夜のコトバ

誰かが奏でた音が夜に響く 最近やたらとhigmaの「ナイトレコード」(Vocal / 沖石 )を聴いている。 www.youtube.com G子氏による深夜の空気感が凝縮されたアニメーションも素晴らしく、それも含めて最近のお気に入りというか、夜の作業のお供になっている。…

本を置き、町を歩く。

休みを取ったので本でも読もうかと思ったが、部屋の中が寒すぎるので午前中、散歩に出てみることにした。 外をぶらぶら歩くなんてのはけっこう久しぶりで、通いなれた町のメインストリートを避け、ふらりと裏道に進み、そのまま歩いてきょろきょろしていた。…

映画『ゾンビーバー』

なんか毎年クリスマスにはホラー映画を観るようになっていて、今年はこいつにした。 『ゾンビーバー』。名前の通り、ビーバーがゾンビになって襲ってくる一発ネタみたいなゾンビ映画だ。ビーバーがゾンビ、という以外は特に特筆するようなところはない、田舎…

鴨崎暖炉『密室狂乱時代 絶海の孤島と七つのトリック』

感想 不在証明ならぬ不解証明が司法で適用され、密室殺人が横行する世界を舞台にしたシリーズ二作目。今回もまた、密室のための舞台、人物、そして密室で構成されている。密室は前作以上の七つが矢継ぎ早に繰り出され、繰り出されるそれを次々に撃破していく…

さがら総『恋と呪いとセカイを滅ぼす怪獣の話』

久々にラノベを買ったら、著者の不手際で回収されてしまった。 mfbunkoj.jp 割とネタバレ的なことも書いていくのでそのつもりで。 星堕ち島――その島には特別な子供たちが集められていた。十数年前に落ちた星の影響で「呪われた」異能者となった彼ら。隔離さ…

今日、ようやくノートパソコンを買い替えた。8年くらい使ったDellのInspiron15 5000はまあ、まだ動くけど、さすがに新品の16GBのサクサク感にはかなわないので、いろいろ移したし、ご苦労様ってかんじでしょうか。てか、意外と雑に扱ってもしぶとく動いたし…

私はそれを問えるだろうか

宮崎駿の新作『君たちはどう生きるか』の公開日が決定し、ポスタービジュアルが公開されていた。だいぶ前から吉野源三郎の同名著書のタイトルを借りた本作を製作中という話だったが、本当に作ってたんだなあというか、宮崎駿最新作という現実感がじわじわ広…

基本のキだけでここまでできる:アガサ・クリスティー『ねじれた家』

1949年作 アガサ・クリスティーのノンシリーズの一作にして、本人が自己ベストに挙げていることでも知られる本作。最近新しい映画も出たなそういえば。 クリスティーは、ノンシリーズ物にも良作がゴロゴロしているので侮れない。この作品は、クリスティの最…

笹沢左保『真夜中の詩人』

トクマの特選による笹沢佐保の「栖川有栖選 必読!Seletion」も第四弾。今回は誘拐ミステリの異色作。 誘拐ミステリと言えば誘拐犯との交渉、身代金の受け渡しをめぐる攻防、そして誘拐された者の安否――といったものが中心に展開されるのが一般的な誘拐ミス…

実はそうじゃなかった:アガサ・クリスティー『ABC殺人事件』

クリスティーによるミステリ史におけるマイルストーン、そのまた一つ。1936年出版。 もしかしたらエラリー・クイーンによる「X」「Y」「Z」*1に触発されたのかもしれない作品だが、知名度は断然こちらが上で、ミステリという歴史の中で「ABC殺人」「ミッシン…

ミステリ感想まとめ その8

赤川次郎『死者は空中を歩く』 死者は空中を歩く (徳間文庫) 作者:赤川次郎 徳間書店 Amazon 奇妙な作品というか。ベースは『そして誰もいなくなった』みたいなシチュエーションで、万華荘という富豪の住む屋敷に呼び出された人間たちがその当の富豪が自分を…

泡坂妻夫『雨女』

雨女 (光文社文庫) 作者:泡坂 妻夫 光文社 Amazon 「雨の女」「蘭の女」「三人目の女」の前半三作の「女シリーズ」(?)は、最近あまり見かけなくなったような気がするエロティックミステリ。とりあえず女の人が出てきてセックスするみたいなサービスシーン…

ディック・フランシス『度胸』

アート・マシューズが、ダンスタブル競馬場の下見所の中央で、一発の銃声とともに、あたりに血を飛び散らせて自殺を遂げた。 著者の第二作。1965年出版。 いきなりパドックで騎手が自殺するという衝撃の展開から幕を開け、まずは掴みはバッチリである。そし…

身辺雑記

最近、わりと納豆パスタを作るのがブームだった。まあ、クソ簡単だからって言うのが理由なのだが、ゆでたパスタに納豆と茅乃舎の粉末出しをぶっかけて醤油をかけ、+小さいパック入り豆腐を入れて満足感を出すのがスタンダードな感じだった。豆腐は最初潰し…

映画『夏へのトンネル、さよならの出口』

だいぶ前になってしまったが、夏の終わりの締めくくり、というわけではないが『夏へのトンネル、さよならの出口』の劇場アニメを観に行った。感想としては、なかなか悪くなかった。同行者は意外性がなくてなんかすごいストレートだと言っていたが、まあ、そ…

物語が悲しみで結晶するとき:ジェローム・ルブリ『魔王の島』

あらすじ 地方で新聞記者をしているサンドリーヌは、これまで一度も会ったことがない祖母の死の報を受け、同時に弁護士から祖母の住んでいた島に来てほしいと頼まれる。気が進まないサンドリーヌだが、上司に無理やり一週間の休暇を与えられ、その島に赴くこ…

身辺雑記

ツイッターに書き込んでないし、書き込む気もなんかあんまり起きないので、ブログに適当な近況を書くことにする。 ちょい前になるが、初めて郵便局のATMで硬貨を預ける経験をした。小学生くらいから使っているプラスチックのケロッピーの貯金箱が満杯になり…

ディック・フランシス『本命』

熱した馬体のにおいと河からたちのぼる冷たい霧が入り混じって私の鼻をついた。 ディック・フランシスの第一作。著者は元障害競馬の騎手で、その経験を生かした詳しい描写と迫真のレースシーンが作品の核となっている。あと、ディック・フランシスと言えば、…

エラリー・クイーン『フランス白粉の謎』/中村有希 訳

というわけで、創元推理文庫の国名シリーズ新訳第二弾の感想。 久々の再読でしたが、再読しても、というか再読の回数が増えるごとに楽しく読めています。この作品、初めて読んだのはたぶん『Xの悲劇』『エジプト十字架の謎』の次くらいだったと思うんですが…

今日は『女王国の城』の下巻を読み返していた。やはり江神シリーズというか、クイーン流のロジックは好い。ことさら一から十まで伏線だとか、やたら細かく分けた公理を一つ一つ検討していくとかそういう感じじゃなくて、要点を押さえたシンプルさ。そしてそ…

最近、アニメ観てたよ(以前よりは)という、どうでもいい話。

そういえば、トライガンのPV第二弾を見た(だいぶ前にだが)。ロバート・デニーロみたいな名前のオジサンキャラがミリィの替りに出てきてたけど、そんな違和感はなかった。メリルも新人記者に設定改変されてて、デニーロおじさんはその教育係という設定らし…

H.H.ホームズ『密室の魔術師』

Introduction 評論家アントニー・バウチャーが手掛けたカーに捧げる一作。その文庫が最近、扶桑社から出た。 この作品は、エドワード・D・ホックがアメリカ、イギリス、スウェーデンの作家、編集者、批評家、ファンの計十七名からの好みの密室物と不可能犯罪…

先日の5日の昼頃、津原泰水氏が今月の2日に亡くなっていたことをSNSで知った。 津原泰水という作家の作品について、僕が初めて触れたのは『ルピナス探偵団の当惑』だった。ミステリ読みなので、密室につられて読んだのだ。読んだ当時は、そこまで惹かれたわ…

G.K.チェスタトン『ブラウン神父の秘密』

シリーズ第四集。ここからは未読なので、そういう意味でも楽しみ。 これまでの感想はこちら kamiyamautou.hatenablog.com kamiyamautou.hatenablog.com kamiyamautou.hatenablog.com 「ブラウン神父の秘密」 第三集では姿を消していたブラウン神父の相棒、フ…