蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

それは、過去の希望の姿:映画『イカリエ₋XB1』

イカリエ、なんだか不思議な語感。聞きなれないこの言葉は、旧チェコスロヴァキアの映画のものだ。 1963年。鉄のカーテンの向こう側で、『2001年宇宙の旅』(68年)に先駆ける形で生まれたSF映画。そしておそらくキューブリックのそれに何らかの影響を与えた…

ここは、はるか遠くの国ではない:アンドレ・ジッド『ソヴィエト旅行記』

新たに作り直されたこの社会階級の上から下まで例外なく、最も評価されるのは、最も卑屈な者たち、最も迎合的なものたち、そして最も下劣な者たちである。 ソヴィエト旅行記 (光文社古典新訳文庫) 作者: アンドレジッド,Andr´e Gide,國分俊宏 出版社/メーカ…

うつし世VS夜の夢:江戸川乱歩『大暗室』

大暗室 作者: 江戸川乱歩 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2012/10/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 『大暗室』。乱歩の通俗長編の中ではタイトルからして比較的地味な印象で、特に語られることのない作品のように思える。筋立てもい…

ここ最近、なぜか平沢進の「パレード」を頻繁に聞くのだが、これを聴いていると江戸川乱歩を強く意識する。 江戸川乱歩といえば、隠れ蓑願望とか変身願望、「現世は夢、夜の夢こそまこと」みたいな言葉に代表されるように、ここではないどこかを求めるイメー…