蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

島田荘司

寂しさが冷たく発火する:島田荘司『火刑都市』

島田荘司作品の中にあって、かなり地味な地位にあると思われる本作。著者の二枚看板である御手洗シリーズや吉敷シリーズではないノンシリーズものではあるが、主人公は吉敷シリーズでたびたび出てくる中村吉造が務めている。 この小説は島田荘司の社会派的な…

島田荘司:御手洗シリーズ作品紹介 その1

一応、今のところ御手洗潔シリーズは、ほぼほぼ全部読んでると思うので、その登場作品を出来る限りというか、根気が続く限り刊行順で紹介していこうかと。まあ、マニアながっつり批評みたいなのはムリなので、軽いファンの思い出話まじりの紹介文です。……ま…

素晴らしい実写化:映画『夏、19歳の肖像』

島田荘司の映像化は、本邦でも近年になって多数作られているのだが、台湾で制作されたこの『夏、19歳の肖像』がたぶん一番いい出来だろう。原作を基本としながら、現代の話としてスマートフォンを有効活用し、サスペンス性やミステリ性を底上げして、原作の…

島田荘司『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』

セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴: 名探偵 御手洗潔 (新潮文庫nex) なんとなく再読してみようと手に取って、なんだかあっという間に読んでしまいました。御手洗シリーズといえばの強烈で奇天烈な謎、というものではありませんが、奇妙な発端から、次…

島田荘司を読んだ昔、そして今。

今回は自分にとっての島田荘司ということについて語っていきたいというか、書き留めておきたい。というわけで好き勝手語っていきますよ。 島田荘司という巨大過ぎる作家の作品を私が読み始めたのは、新本格ミステリ、中でも二階堂黎人や有栖川有栖、法月綸太…

島田荘司『Classical Fantasy Within 第八話 ハロゥウイン・ダンサー』

Classical Fantasy Within 第八話 ハロゥウイン・ダンサー (講談社BOX) 作者: 島田荘司,士郎正宗 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2010/05/07 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 8回 この商品を含むブログ (3件) を見る 島田荘司による(現時点で…

偶然の極北 島田荘司『屋上の道化たち』

※この文では『屋上の道化たち』のネタバレを含むので注意 屋上の道化たち 作者: 島田荘司 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/04/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (7件) を見る 『鳥居の密室』、いい作品だとは思うんだけど、これをもって島田…

煙草と霧と放射能:島田荘司『ゴーグル男の怪』

ゴーグル男の怪 (新潮文庫) 作者: 島田荘司 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2018/02/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る とりあえず結論から言うと『ゴーグル男の怪』は幻想小説の傑作である。著者だから書き得た異形の幻想ミステリとい…