蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2018-01-01から1年間の記事一覧

文章を書く、ということについて、みんなどんな風に書いてるんだろう。とにかく書くのが楽しくて、それだけでたーのしー、というタイプもいるんだろうけど、自分はあんまりそういう感じではない。一気に書くというよりはぶつぶつ書いてはやめ、うーんと唸り…

ウマ娘プリティーダービー 『BNWの誓い』感想

三周ほどしましたし、BNWの誓い――ウマ箱四巻に収録されているOVA新作三話についての感想を。筋に沿って語るため、ネタバレ前提なのでそのつもりで。まあでも、映像的な情報や楽しみが盛りだくさんなので、話の筋を知ってもその面白さは変わらないと思います…

「百合」って言葉、別に好きでも嫌いでもないんだけど、それを気嫌いする気分というのはまあ、分からないでもないというか。 なんだろう、人物の関係って、その人物たちごとにあって、そこにはある意味、名づけようのない関係性がそれぞれあるわけで、一様で…

映画『遊星よりの物体X』感想

『遊星よりの物体X』、である。カーペンターの『遊星からの物体X』ではなく。 今となってはカーペンターのリメイク元として有名という感じの51年作品、そして製作(演出の大部分も担当したとされる)はあのハワード・ホークス。 ていうか、ハワード・ホーク…

彼方より来たもの

もう十五日で、十二月十日、もとい今年の黒鳥忌をだいぶ過ぎてしまったわけだが、まあいいや、僕はそんなことは気にしないぜ。とりあえず、自分にとって中井英夫、というか『虚無への供物』がどんな存在なのか、ということを書きたくなったので書こうかなと…

ちょっと『ジャナ研の憂鬱な事件簿』などの青春ミステリを読んでダイイングメッセージについて、少し思ったことなど。 ダイイングメッセージというと、かつて密室などと並んで探偵小説といえば、というガジェットであったにもかかわらず、今現在「本格」方面…

「私」を拡散するために 江戸川乱歩『盲獣』

※ 一応、ネタバレというやつなので注意してください。とはいえ、そんなことでどうこうなる作品だとは思いませんが。 盲獣 (創元推理文庫) 作者: 江戸川乱歩 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2012/10/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る …

なんか久々に映画館に行ってきて『来る』を観てきた。原作は読んでいない。 感想としては、後半からの奇妙な展開というか、そのどこかコミック的ともいえるテイストが評価の分かれ目かもしれない、という感じ。 前半はかなりソリッドなホラーだ。巻き込まれ…

一応、アニメのGODZILLAの感想も書いとくか。DVDで『怪獣惑星』と『メカゴジラ・シティ』を観たんですが、まあ、事前に批判意見いっぱい見たのでそれほどでもないんじゃないの、みたいな感じでしょうか。うーん、でも私としては、全然OKというか、54年の『ゴ…

夢の続き:大樹連司『GODZILLA 怪獣黙示録』『GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ』感想

GODZILLA 怪獣黙示録 (角川文庫) 作者: 大樹連司(ニトロプラス),虚淵玄(ニトロプラス) 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/10/25 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (7件) を見る GODZILLA プロジェクト・メカゴジラ (角川文庫) 作者: 大樹連司(ニト…

模倣するけもの:『けもーたりぜーしょん』

同人――同じ趣味を持つ人の集まり、というのはかつての辞書的な意味であり、現在における同人の大雑把なつかみ(というか、あまり知らない人間が大雑把にイメージするもの)としては、好きな作品のキャラクターをもちいて自分なりにその作品世界を模倣してみ…

しかし、なっかなか定期的に更新できませんね……twitterのツイを引き延ばせば割とブログの文章も楽なんじゃないかと思いついたときは気をよくしたんですが、全然です。まあ一応コアにして深堀するのにはいいかな、という感じでしょうか。長い文章書くことでつ…

死を見つめる:施川ユウキ『銀河の死なない子供たちへ』感想

銀河の死なない子供たちへ(上) (電撃コミックスNEXT) 作者: 施川ユウキ 出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス 発売日: 2017/09/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る 銀河の死なない子供たちへ(下) (電撃コミッ…

生真面目な幽霊譚の快作 映画『ザ・フォッグ』

ザ・フォッグ [Blu-ray] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 2018/08/08 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る 未視聴のジョン・カーペンター監督作で、残るは『ヴァンパイア最後の聖戦』とこれだったわけなんですが、積んでたDVDをついに観…

島田荘司『Classical Fantasy Within 第八話 ハロゥウイン・ダンサー』

Classical Fantasy Within 第八話 ハロゥウイン・ダンサー (講談社BOX) 作者: 島田荘司,士郎正宗 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2010/05/07 メディア: 単行本(ソフトカバー) クリック: 8回 この商品を含むブログ (3件) を見る 島田荘司による(現時点で…

ルーシャス・シェパード『竜のグリオールに絵を描いた男』

竜のグリオールに絵を描いた男 (竹書房文庫) 作者: ルーシャス・シェパード,内田昌之 出版社/メーカー: 竹書房 発売日: 2018/08/30 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る 全長一マイルにも及ぶ巨大な竜グリオール。かつて魔術師によってその動…

狂ったケモノが見通す視線 映画『狂った野獣』

町山智博氏と春日太一氏が語る東映時代のエピソードの中で、渡瀬恒彦最強伝説という話があり、、その伝説の一つとして挙げられて、ずっと観たかった映画。ようやく、見つけてきて鑑賞しました。いやー、なかなかすごかったです。 渡瀬恒彦っていうと、私は十…

無音の中の音 映画『クワイエット・プレイス』

※ネタバレ前提で語ってます。 ホラーと音は密接な関係にあるといっていい。無音が何かが起こり得る予兆と緊張、そして実際に起こる何か。ホラー映画はその配分が出来を左右するが、優れたホラーはどちらかというとその無音の部分――何かが起きる予兆が怖かっ…

幻想が溶けた後に残るモノ 戸川昌子『緋の堕胎』

緋の堕胎 (ちくま文庫) 作者: 戸川昌子,日下三蔵 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/10/11 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 戸川昌子という作家についていえば、歴代一の激戦と言われた第八回の江戸川乱歩賞において、あの『虚無への供物』…

ドニ―・アイカ―『死に山』

死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相 作者: ドニー・アイカー,安原和見 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/08/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る この本でディアトロフ峠事件という遭難事故を初めて…

伊藤計劃のサイト、「スプークテール」を今さら見てきたんだけど、自己紹介をクリックした先にある「モノローグ」や、掲示板に伊藤さんが書いている、エロゲーあるいは「萌え文化」に対する批判が結構激烈で(とはいえ、内容はなかなか面白い)、これを書い…

「腑に落ちる」という評価は確かにミステリにとって肯定的な評価ではある。というか、ミステリに限らず小説は読者を説得しなくてはならない(埴谷雄高も言ってた!)ことは確かだ。そう努力することは何ら間違いではない。 しかし、「腑に落ちた」から素晴ら…

次回は戦争か? 映画『ザ・プレデター』

※一応、『ザ・プレデター』のネタバレしてるんで、観てから読むことをおススメします。 地球にやってくる宇宙人には大雑把に分けて二種類がいる。ヒョロガリとマッチョである。そして大抵はヒョロガリ――いわゆるグレイ型やタコ型宇宙人という連中である。そ…

何のために表現するのか パスカル・キニャール『世界のすべての朝は』

世界のすべての朝は (伽鹿舎QUINOAZ) 作者: パスカル・キニャール,手嶋勇気,高橋啓 出版社/メーカー: 伽鹿舎 発売日: 2017/03/23 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る というわけで初キニャール。伽鹿舎の文庫で、帯文の伊藤計劃がどうたらという所に…

消失、そして越境:ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』

吸血鬼ドラキュラ (創元推理文庫) 作者: ブラムストーカー,Bram Stoker,平井呈一 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 1971/04/18 メディア: 文庫 購入: 5人 クリック: 162回 この商品を含むブログ (61件) を見る ついにこの古典中の古典を読む。いまさらな…

偶然の極北 島田荘司『屋上の道化たち』

※この文では『屋上の道化たち』のネタバレを含むので注意 屋上の道化たち 作者: 島田荘司 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/04/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (7件) を見る 『鳥居の密室』、いい作品だとは思うんだけど、これをもって島田…

クラシック、そしてポップ 映画『アトミック・ブロンド』

アトミック・ブロンド スペシャル・プライス [Blu-ray] 発売日: 2020/01/08 メディア: Blu-ray これはかなり好みのスパイ映画。伊藤計劃氏が観たらかなり喜んでたんじゃないか、そんな感じがする。 スパイ映画というと、大きく二つにテイストが分かれ、一つ…

『けものフレンズ2』の何にびっくりって、この短期間で火中というか、火だるま確実な栗を拾いに(拾わされに?)行く人間が現れたことですよ。どこのどなたが監督するのか分かりませんが、家族を人質に取られたんだろうか……なんて。PVは大荒れでぶっちぎり…

ゾンビ映画? いやミステリ映画だ! 映画『カメラを止めるな!』

まあ時間もたったし、ある程度ネタバレでいきますね。 ようやくあの話題の映画『カメラを止めるな』が我が地元で(地方の悲しみ)も公開され、行ってきましたよ。確かにこれはなるべくネタバレ回避で観に行った方がいいかもしれない。ただ、実のところこの映…

破壊する先に何があるのか 映画『スター・ウォーズ エピソード8:最後のジェダイ』

ようやく観ましたよスター・ウォーズエピソード8を。 まあ、もう時期も時期だしネタバレで語っていくんでそこはよろしくです。 公開後にその“破壊”を許容するかどうかの姿勢がこの映画の“前進”“革新”を受け容れる者とそうでない者、みたいな分断が広がって…