蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧

梶龍雄『葉山宝石館の惨劇』

Impression 徳間が行っている本格ミステリ者への文化事業――梶龍雄の作品復刊も着々と進んでおり、これまで「驚愕ミステリ大発掘コレクション」として『龍神池の小さな死体』『清里高原殺人別荘』が、「青春迷路ミステリコレクション」として『リア王密室に死…

東川篤哉『中途半端な密室』

かつて光文社で本格推理短編を公募し、鮎川哲也が選者となって選ばれた作品をまとめた『本格推理』という文庫シリーズがあり、後に二階堂黎人が選者を引き継いだ『新・本格推理』と続いた。このシリーズには、東川篤哉の他にものちにデビューする作家たちが…

カーター・ディクスン『五つの箱の死』

本作については、カーの作品の中で正直なところ、あまり顧みられていない作品というのが通説というか、江戸川乱歩のカー問答に始まり、カーを語る文章のなかで特にほめている記述は見当たらない。そんな状況を「奇想の本棚」の製作総指揮者は嘆き、さらにこ…

退屈な少年が見る家族の肖像:鈴木悦夫『幸せな家族 そして その頃はやった唄』

かつて読んだ人間に衝撃を与え、そのぬぐいがたい経験が一部で地下水脈のごとく語り継がれていたという児童書。それがこんど、めちゃくちゃ本を読みこんでいるフォロワーさんが解説を書いて中公文庫で復刊するということで、なんかいてもたってもいられなく…

All You Need Is Love……/and the others:映画『インディージョーンズと運命のダイヤル』

タイトルの英語が意味の通るものなのかは、わからない…… introduction 伝説の考古学者にして冒険者、その第五作目にしておそらく最終作。 このインディ・ジョーンズというシリーズは、自分にとって少し特別な思い入れがある。映画を観始めた最初期の頃の記憶…

小川洋子『沈黙博物館』

「映画は語られることで映画になる」これは、押井守がよく言う言葉だ。ものごとは、それそのものというよりは、誰かによって語られることで姿が見えるようになる。そういえば、『同志少女よ、敵を撃て』でも押井の言葉を思い出すような読書体験をした。「同…

三巻あたりで読むのが途絶えてた『映像研には手を出すな』をなんとなく再度手に取り始めた。正直、四巻あたりは眠かったのだが、五巻後半から面白く感じはじめ、現行の八巻まで読んだ。 映像研は、良いなと思うところはあったけど、当時の「ブーム」的なもの…