蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

孫沁文『厳冬之棺』(訳:阿井幸作

Impression 日本以外のアジア圏、特に中国のミステリに注目が集まっている昨今。向こうにも英米のクラシックなミステリにとらわれた人間がいることを、そして名探偵だトリックだのに拘る日本のいわゆる新本格ミステリ的なものを書く人間がいるということを教…

アニメ『GAMERA -Rebirth-』

ガメラ。それはゴジラに並び立つ怪獣の名前。そして、かの破壊神の対としての守護神の名前――というのはまあ、長い時間の中で何となく確立されたようなものであり、ガメラというカメの化物も、ようはゴジラという「際物」の後追いで製作され、シリーズの中で…

オカルトとロジックの青春ミステリ:今村昌弘『でぃすぺる』

感想 自分の好きな青春ミステリの二大巨頭として東川篤哉の鯉ヶ窪学園探偵部シリーズともう一つは乙一の『GOTH』がある。前者はバカっぽいあっけらかんとした要素が、そして後者は渇いたゴスな雰囲気――以上に噂や殺人鬼といったミステリを探して町をぶらぶら…

阿津川 辰海『午後のチャイムが鳴るまでは』

「青春」という奴はなかなかセンチメンタリズムと相性がいいらしく、青春ミステリといえば、やはり戻らないあの時の郷愁を含んだ悩みや恋愛、それらが醸し出すほろ苦さ、という要素に彩られることが多い。また、それによって「物語」として奥行きを持つとい…

生きづらさの場所:J.Gバラード『殺す』

あらすじ ロンドンの高級住宅街で住人32人が惨殺された。被害者はすべて大人。同時に被害者たちの子ども13人は跡形もなく姿を消していた。メディアを中心に、事件に対し様々な憶測が飛び交う中、内務省から派遣された法学医ドクターグレヴィルは、現場を見て…

少女は殺人を見たか:アガサ・クリスティー『ハロウィーンパーティ』

Impression ケネス・ブラナー版の映画第三作が『名探偵ポワロ:ベネチアの亡霊』というタイトルになっていて、聞いたことないけど、クリスティ財団の公認パロディというか、公式同人の映画化なのかな、と思っていたら本家の『ハロウィーンパーティ』の映画化…

映画『WXIII 機動警察パトレイバー』

そういえば観てなかったなこれ、ということで観てみた。 本作は、機動警察パトレイバーの劇場公開アニメ第三弾となる、のだが前二作の『機動警察パトレイバー the Movie』『機動警察パトレイバー 2 the Movie』――まあいわゆる「押井版」と比べると知名度とい…

そんな希望:映画『SAND LAND』

本当に泉なんてあると思うか? 『SAND LAND』より 28日に鳥山明の漫画原作の映画『Sand Land』を観に行った。レイトで久しぶりに観客自分一人という事態。ホラーじゃなくてよかった、みたいな。映画館の暗がりで一人っていうのは地味に怖いところはあるが、…