蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2022-01-01から1ヶ月間の記事一覧

架神恭介『仁義なきキリスト教史』

「おやっさん、おやっさん、なんでワシを見捨てたんじゃ〜!」 ユダヤ組の中に突如現れた一人の侠客――イエスの断末魔であった。このキリストを名乗ったやくざ者の死が、これより始まる世界的任侠団体、キリスト組の血みどろの闘争――その歴史の始まりであった…

笹沢左保『空白の起点』感想

Impression 有栖川有栖選 必読! Selection2となる本作は著者の第五作(Introdactionには長編第五作というふうに書かれていたが、改めて調べると不明瞭なため削除)に当たる。 この作品も、Selection1の『招かれざる客』同様、ほの暗い風景がつきまとい、登…

法月綸太郎『犯罪ホロスコープⅠ 六人の女王の問題』

犯罪ホロスコープI 六人の女王の問題 (光文社文庫) 作者:法月 綸太郎 光文社 Amazon 久しぶりに再読。エラリー・クイーンによる十二か月のそれぞれに事件を割り当てた『犯罪カレンダー』に倣い、十二の星座とそれにまつわる神話をモチーフとした十二のミステ…

エラリー・クイーン『ローマ帽子の謎』/中村有希 訳

かなり久々に再読してみた。創元推理文庫の新訳版はやはり、読みやすいような気がする(まあ、こういうのは気のせいというのもあったりするのだが)。旧文庫版では省かれていた登場人物目録や劇場の見取り図などが今回ちゃんと入れられているのはうれしい。 …

そこにいたのは人か魔か:倉野憲比古『弔い月の下にて』

弔い月の下にて 作者:倉野憲比古 行舟文化 Amazon Impression 変格探偵小説という言葉がある。HONKAKU――本格ミステリが海外において日本独自の推理小説を語る言葉として「発見」される以前の探偵小説に、それはあった――黒岩涙香、江戸川乱歩、大下宇宇陀留に…

終わりなき蜘蛛の巣:蜘蛛男見てきた

注意:なんかめちゃくちゃ愚痴になっちゃったので、無理して読まなくていいです。ネタバレもなくはないのでそのつもりで読んでください。 別に観る気はそんなになかったのだが、映画館の近くに行く用があったのと、SNSでの高評価に行動を誘導されて観たのだ…

泡坂妻夫『蚊取湖殺人事件』感想

Impression 泡坂妻夫の2005年に刊行された最晩年期の短編集。泡坂ファンというか、濃いめのミステリファンには物足りないと言われているっぽいけど、軽く手に取れるように見えて、きちんとした職人技が織り込まれた短編たちだ。4編のミステリと奇術、そして…