蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧

狂ったケモノが見通す視線 映画『狂った野獣』

町山智博氏と春日太一氏が語る東映時代のエピソードの中で、渡瀬恒彦最強伝説という話があり、、その伝説の一つとして挙げられて、ずっと観たかった映画。ようやく、見つけてきて鑑賞しました。いやー、なかなかすごかったです。 渡瀬恒彦っていうと、私は十…

無音の中の音 映画『クワイエット・プレイス』

※ネタバレ前提で語ってます。 ホラーと音は密接な関係にあるといっていい。無音が何かが起こり得る予兆と緊張、そして実際に起こる何か。ホラー映画はその配分が出来を左右するが、優れたホラーはどちらかというとその無音の部分――何かが起きる予兆が怖かっ…

幻想が溶けた後に残るモノ 戸川昌子『緋の堕胎』

緋の堕胎 (ちくま文庫) 作者: 戸川昌子,日下三蔵 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/10/11 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 戸川昌子という作家についていえば、歴代一の激戦と言われた第八回の江戸川乱歩賞において、あの『虚無への供物』…

ドニ―・アイカ―『死に山』

死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相 作者: ドニー・アイカー,安原和見 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2018/08/25 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る この本でディアトロフ峠事件という遭難事故を初めて…

伊藤計劃のサイト、「スプークテール」を今さら見てきたんだけど、自己紹介をクリックした先にある「モノローグ」や、掲示板に伊藤さんが書いている、エロゲーあるいは「萌え文化」に対する批判が結構激烈で(とはいえ、内容はなかなか面白い)、これを書い…

「腑に落ちる」という評価は確かにミステリにとって肯定的な評価ではある。というか、ミステリに限らず小説は読者を説得しなくてはならない(埴谷雄高も言ってた!)ことは確かだ。そう努力することは何ら間違いではない。 しかし、「腑に落ちた」から素晴ら…

次回は戦争か? 映画『ザ・プレデター』

※一応、『ザ・プレデター』のネタバレしてるんで、観てから読むことをおススメします。 地球にやってくる宇宙人には大雑把に分けて二種類がいる。ヒョロガリとマッチョである。そして大抵はヒョロガリ――いわゆるグレイ型やタコ型宇宙人という連中である。そ…

何のために表現するのか パスカル・キニャール『世界のすべての朝は』

世界のすべての朝は (伽鹿舎QUINOAZ) 作者: パスカル・キニャール,手嶋勇気,高橋啓 出版社/メーカー: 伽鹿舎 発売日: 2017/03/23 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る というわけで初キニャール。伽鹿舎の文庫で、帯文の伊藤計劃がどうたらという所に…