蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』の第二話を読む。 北原にスカウトされ、オグリキャップはレースに出ることになる。東海ダービーについて熱く語る北原にオグリは短く答える。「私をレースに出して」 扉ページに据えられた言葉は、“まだ見据える先もない”。彼女の…

久しぶりにヤンジャンを買った(というか、漫画雑誌を買うのはウン十年ぶり)。何のためにって、『ウマ娘 シンデレラグレイ』のためにである。 ウマ娘はまあ、今のところサイゲームスの開発中であるアプリのメディアミックスとして出たP.A.WORKSによるアニメ…

寂しさが冷たく発火する:島田荘司『火刑都市』

島田荘司作品の中にあって、かなり地味な地位にあると思われる本作。著者の二枚看板である御手洗シリーズや吉敷シリーズではないノンシリーズものではあるが、主人公は吉敷シリーズでたびたび出てくる中村吉造が務めている。 この小説は島田荘司の社会派的な…

またそこそこミステリを読んだので、感想をバーッとあげていこうかと。 四捨五入殺人事件 (新潮文庫) 作者:ひさし, 井上 メディア: 文庫 今現在『十二人への手紙』が再ブレイク中の井上ひさしによる長編ミステリ。二人の作家が招かれた温泉宿で起きる奇妙な…

名探偵の行き先:エラリー・クイーン『第八の日』

『第八の日』は、自分の衝撃を与えたミステリ10選として過去挙げていた作品だ。 kamiyamautou.hatenablog.com そして、最近、『ミッドサマー』を観て、なんかちょっと似たようなところあるな、みたいな気がしたので、なんか記事のネタになるかもしんねえ……と…

そのわけは天の上に:映画『明日、君がいない』

ツイッターの相互フォロワーである青さん@8823_blue が、御自身のブログ『偽物の映画館』で紹介されていた映画に興味を持ち、観てみました。 映画のタイトルは『明日、きみがいない』(原題は『2:37』)。監督は ムラーリ・K・タルリ。 青さんの紹介記事はこ…

『バーナード嬢曰く。』の五巻が発売されたので、先日読んだ。四巻から二年ぶりということだが、町田さわ子は相変わらず本を読んでいて、自分の二年の停滞ぶりを思うと、なんだかその姿は眩しい。 今回もとても素晴らしく、彼らと本の風景は、巻を重ねるごと…

細切れにされてゆく「わたしたち」

最近、色んな積読をペラペラ見ては次に移るという感じで、なかなか一冊を読み切ることができないでいる。なんというか、無気力感もすごい。文字を追うのが酷く億劫でしかたがない。 例のウイルスの影響は、地方の都市にも確実に忍び寄ってきていて、相変わら…

モノトーンの幻影:ブッツァーティ『神を見た犬』

つまり、私たちが書き続ける小説や、画家が描く絵、音楽家が作る曲といった、きみの言う理解しがたく無益な、狂気の産物こそが、人類の到達点をしるすものであることに変わりなく、まぎれもない旗印なんだ。 このうえもなく無益だろうとかまわない。いや、む…

王と神:浅倉秋成『教室が、ひとりになるまで』

私が目指したのは、教室を一つにすることではなく、教室をひとりにすること。 素晴らしい作品であり、青春物語だった。 帯に書いてある通り、“最高”のクラスを巡る物語だ。主人公のいるA組と隣のB組、二つの教室は合同で様々なレクレーション企画を催し、そ…

悪魔のドールハウス&箱庭:映画『ヘレディタリー/継承』&『ミッドサマー』

※軽くネタバレとか踏んでいると思うので、そのつもりで読んでください。 悪魔がドールハウスや箱庭を作っている。そこには一見、影や悪意の気配はしない。だが、普通とはどこか違う匂いが少しする。悪魔はそこに心が傾きそうな人形を入れ、その心を針でつつ…

ここ最近読んだミステリの感想をざっと上げていこうかな、と。結構避けがちなミステリ感想ですが、そこそこ読んでて、感想書いてないのが溜まってきたので。まあ、軽く触れる程度に。 電氣人閒の虞 (光文社文庫) 作者:詠坂 雄二 出版社/メーカー: 光文社 発…

舞阪洸『彫刻の家の殺人―御手洗学園高等部実践ミステリ倶楽部〈2〉』

御手洗学園シリーズ第二弾。今回もまた、実にストレートな本格もので、登場人物表に見取り図に、読者への挑戦もついております。 クオリティも前作に勝るとも劣らない秀作なので、こちらも本格好きにおススメしたいですね。 今回は長編ということで、結構ゆ…

富士見ミステリー文庫の隠れた良作:舞阪洸『亜是流城館の殺人―御手洗学園高等部実践ミステリ倶楽部』

かつて富士見文庫にはラノベのミステリーレーベルという存在があった。富士見ミステリー文庫。自由な形で様々な快作珍作含めたライトノベルミステリが生まれ、そして消えていった。そんななかで、本格ミステリとしての結構を備えた作品も多数刊行されていた…

島田荘司:御手洗シリーズ作品紹介 その1

一応、今のところ御手洗潔シリーズは、ほぼほぼ全部読んでると思うので、その登場作品を出来る限りというか、根気が続く限り刊行順で紹介していこうかと。まあ、マニアながっつり批評みたいなのはムリなので、軽いファンの思い出話まじりの紹介文です。……ま…

誰かの物語が私という物語を作る:エリック・マコーマック『パラダイス・モーテル』

初マコーマック。全編これ奇譚という感じのエピソードが横溢していて、とても良かった。そして物語というものを巡る物語というか、そんな構造の物語であり、それが急に雲散霧消してしまうその作者の騙りというか、書きぶりにも唸らされる作品でした。 なんと…

学生アリスシリーズの思いで。

そういえば、有栖川有栖の学生アリスシリーズについて少し語りたい。 中学から高校にかけてのことだったと思う。当時探偵小説に飢えていた。小学生の時に乱歩に出会って、探偵小説にのめりこんでいたわけだけど、ホームズ、ルブラン、ヴァンダインの『カブト…

消えないニオイ:映画『パラサイト 半地下の家族』

『パラサイト 半地下の家族』を観てきたので、とりあえずその感想を。ちょっと内容に触れたりするので、観てない人は観てから読んでください。あらすじは略。 なんていうか、キツイ映画だった。別に面白くないというわけではない。映画としてはとても面白い…

なんだかんだで二〇一九年も終わり、この感想文やら雑文やらの集合体も三年近く続きました。とりあえず百記事書けたらということで始めて何とか書き切りましたし、二百くらいいったら終わってもいいんじゃないかと思ってたりしてますが、とりあえず何らかの…

素晴らしい実写化:映画『夏、19歳の肖像』

島田荘司の映像化は、本邦でも近年になって多数作られているのだが、台湾で制作されたこの『夏、19歳の肖像』がたぶん一番いい出来だろう。原作を基本としながら、現代の話としてスマートフォンを有効活用し、サスペンス性やミステリ性を底上げして、原作の…

彼らが“ぼくら”になる7日間:映画『ぼくらの7日間戦争』

宗田理の『ぼくらの七日間戦争』といえば、ジュブナイルの金字塔で自分も小学生高学年から中学生の時にこの作品に触れ、シリーズを結構読んだ覚えがある。『ぼくらの魔女戦記』の一巻の最後あたりがたぶん一番好きだ。 このシリーズとズッコケシリーズやかぎ…

物語り続ける、その後姿に。

『白鯨伝説』というアニメを知っているだろうか。一九九七年から一九九九年にかけてNHK衛星第二で放送されたSF冒険アニメで、監督は『ガンバの冒険』や『エースをねらえ』OVA版の『ブラックジャック』などを手掛けた出崎統。タイトルの通り、メルヴィルの『…

あの夏、終わってしまった何かに:映画『Summer of 84』

閑静な郊外。そこには見知った穏やかな人々がいる――そういうことになっている。 しかし、誰もその心の裡を知りはしない。お互いが本心を見せたりはしない中、ふと疑いを抱くとき、そこを覗くことは何を招くのか。 この映画は、80年代のノスタルジックな、し…

魂の行方:筒城灯士郎『世界樹の棺』

恋を成就させたいのに自ら失恋に向かっていく人も……世の中にはいると思うんです。 今年の本格ミステリで一番好きかもしれない。そんな作品に出会えました。まあ、なんというか波長が合う、完全に好みに合致した感じなので、広く勧められるかというと、ちょっ…

狂気が見た白昼夢:映画『まぼろしの市街戦』

まぼろしの市街戦≪4Kデジタル修復版≫ [Blu-ray] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 2019/08/07 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る 名前は聞いていたけど、観たことがなかった映画。今回、デジタル修復版が出て、気軽にに観れるようになっ…

相反する世界の接触面:半田畔『科学オタクと霊感女』 -成仏までの方程式-

囚われる――人は何かに自分の意志を制限される。それは言葉だったり、過去の過ちや願いや希望だったりする。何かに囚われていることは、自由ではないというふうに見られがちだ。だが、何かに制限されることが、その人を形作っている、その生き方を縁取ってい…

野村亮馬『インコンニウスの城砦』

あらすじ 氷期を迎えつつある惑星。少しでも温暖な赤道面を巡り、世界は北半球と南半球に分かれて争っている。『深い湖」のカロは、孤児院から南半球側の密偵に志願した少年だ。彼は北半球側が建設中の56号移動城砦――その地下工廠に潜り込み、そこで見聞きし…

ライミ印の笑えるホラー:映画『スペル』

サム・ライミ作品。『死霊のはらわた』を観れば分かるが、彼のホラーはきちんとしたホラー演出で驚きつつも観てるうちになんだかドツキ漫才というか、スプラスティックコメディめいた展開になっていき、ついには恐怖よりも笑いが先に来るようになるのだ。 こ…

あらすじって、正直書くのが一番メンドイ部分なのだが、たぶん一番読まれない部分だろう。しかし、何故か書かないと先に進めない気がして、わりとあらすじを書こうと頑張って、そして書きかけのモノがたまっていくのだ……。まあでも、そもそもあらすじを書く…

レオーネという西部劇の思いで。

マカロニ・ウエスタン、結構好きなんですよ。まあ、どのジャンルに対しても言えるんですが、マニア的な取り組みで臨んでいるわけではないので、半可通ではあるんですが、大学生のころに結構ハマって、観てたことがありました。 最初に観たのは、あの三大レオ…