蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

アントニイ・バークリー『レイトン・コートの謎』

あらすじ レイトン・コートと呼ばれる田舎の屋敷で、主人が額を撃ち抜かれて死んでいるのが発見された。現場は鍵が掛かっており、遺書も発見されたため、警察は自殺として事件を扱うが、そんな中、主人のパーティーに参加していた妙な男が殺人説を主張し始め…

テレビドラマ『名探偵モンク』シーズン2

シーズン1の感想はこちら kamiyamautou.hatenablog.com シーズン2にいたり、いよいよフォーマットが固まりつつも、幅広い趣向が凝らされ、事件や展開に奥行きが生まれている。コメディもますます快調。正直2話あたりは出来がちょっと心配だったけど、全体…

山前 譲 編『真夜中の密室』

真夜中の密室 (飛天文庫 や 3-1 密室殺人傑作選) 作者:山村 美紗 飛天出版 Amazon 昭和30年代から昭和60年代にかけて発表された8作をまとめたアンソロジー。メンツは山村美紗、高木彬光、中町信、泡坂妻夫、大谷羊太郎、天城一、島田一男、鮎川哲也で、個人…

ミステリ感想まとめ その11

森博嗣『すべてがFになる』 すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&Mシリーズ (講談社文庫) 作者:森博嗣 講談社 Amazon 実は漫画版しか読んでなくて、原作は読んでいなかったやつ。今読んでもというか、今読んだほうが作中のIT要素は身近になっている感…

「魔術」なトリック:アガサ・クリスティー『魔術の殺人』

ミス・マープルのシリーズ第五作目。本書はクリスティの中だと結構トリックが印象的な作品かもしれない。カー寄りというか、カーが喜びそうな雰囲気を持つ作品。 あらすじ マープルは学生時代の知り合いから妹の様子を見てきてくれないかと依頼を受ける。彼…

テレビドラマ『名探偵モンク』シーズン1

コロンボと並ぶミステリドラマの金字塔『名探偵モンク』のDVDボックスを購入したので視聴していこうという計画。全7シーズン+FINAL SEASONの123話(!)もある。今までこんな長期シリーズのドラマを完走した経験がないので途中でやめる可能性もあるかもだが…

なんでこんなに“夢”がないんだ:『ウマ娘 プリティーダービー Season3』感想

一応、楽しみにしてたわけだし、三期の総評を書いておこうとは思うけど、自分にとってこの作品、一言で言うと、 夢がねえ、ということに尽きる。 絵は良いし、声優さんたちの演技も良い。途中途中では良いシーンや話だってある。特にサトノダイヤモンドがら…

悪魔というか、鋏が怖え:映画『エクソシスト3』

毎年クリスマスにホラー映画観てるのだが、なんかだるいな~と、気がついたら寝てて、あっさり25日過ぎちゃったのだ。まあいいや。 そんな感じで、そういえばこれ観てなかったな、と次の日に観たのが『エクソシスト3』。結構前から観たかったのだが、レンタ…

いつかそれは再生する:映画『ゴジラ-1.0』感想

※ネタバレ前提な感じなので、そのつもりで 文化の日ということで映画に行く。 というわけで70周年記念作という『ゴジラ-1.0』を観に行った。監督は山崎貴。一部の映画ファン(特にマニア方面)からは結構敵視されてたりするし、自分も「三丁目の夕日」はそ…

一昨日あたりから喉の調子が悪く、腫れあがっているのがわかる。熱がないのは救いだが、喉に意識が行って、微妙に読書がはかどらない気分。 色々併読してて、全然読み切らない本が増えているせいもあるかもしれない。 今回は最近見た映画や読んでる本など、…

天使と悪魔:アガサ・クリスティー『カーテン』

なんかイマイチ更新できないので、旧ブログに書いてたやつの転載でお茶を濁す(じゃっかん改稿してある)。『カーテン』は今のところクリスティのベストというか、自分の中の本格ミステリベストにも入れたい作品。あと、自分のこの感想文章もけっこう気に入…

ウマ娘 プリティーダービー Season 3 第一話『憧れた景色』感想

ウマ娘のアニメ。その第三期。あの第一印象ヘンなアニメがここまで続くようになるとは、となかなかの感慨がありますね。 第一期の楽しく、かつアイドルテイストなスポーツものとして、独自の世界を構築し、それをステップボードに、よりモデル馬の事実を忠実…

ミステリ感想まとめ その10

読んだけど感想書いてなかったやつを、再読したやつも含めてザクっと。 毒入りコーヒー事件 (宝島社文庫) 作者:朝永理人 宝島社 Amazon 『幽霊たちの不在証明』でデビューした著者の三作目。嵐の山荘物というか、土砂崩れで交通が遮断された村の家に、訳あり…

孫沁文『厳冬之棺』(訳:阿井幸作

Impression 日本以外のアジア圏、特に中国のミステリに注目が集まっている昨今。向こうにも英米のクラシックなミステリにとらわれた人間がいることを、そして名探偵だトリックだのに拘る日本のいわゆる新本格ミステリ的なものを書く人間がいるということを教…

アニメ『GAMERA -Rebirth-』

ガメラ。それはゴジラに並び立つ怪獣の名前。そして、かの破壊神の対としての守護神の名前――というのはまあ、長い時間の中で何となく確立されたようなものであり、ガメラというカメの化物も、ようはゴジラという「際物」の後追いで製作され、シリーズの中で…

オカルトとロジックの青春ミステリ:今村昌弘『でぃすぺる』

感想 自分の好きな青春ミステリの二大巨頭として東川篤哉の鯉ヶ窪学園探偵部シリーズともう一つは乙一の『GOTH』がある。前者はバカっぽいあっけらかんとした要素が、そして後者は渇いたゴスな雰囲気――以上に噂や殺人鬼といったミステリを探して町をぶらぶら…

阿津川 辰海『午後のチャイムが鳴るまでは』

「青春」という奴はなかなかセンチメンタリズムと相性がいいらしく、青春ミステリといえば、やはり戻らないあの時の郷愁を含んだ悩みや恋愛、それらが醸し出すほろ苦さ、という要素に彩られることが多い。また、それによって「物語」として奥行きを持つとい…

生きづらさの場所:J.Gバラード『殺す』

あらすじ ロンドンの高級住宅街で住人32人が惨殺された。被害者はすべて大人。同時に被害者たちの子ども13人は跡形もなく姿を消していた。メディアを中心に、事件に対し様々な憶測が飛び交う中、内務省から派遣された法学医ドクターグレヴィルは、現場を見て…

少女は殺人を見たか:アガサ・クリスティー『ハロウィーンパーティ』

Impression ケネス・ブラナー版の映画第三作が『名探偵ポワロ:ベネチアの亡霊』というタイトルになっていて、聞いたことないけど、クリスティ財団の公認パロディというか、公式同人の映画化なのかな、と思っていたら本家の『ハロウィーンパーティ』の映画化…

映画『WXIII 機動警察パトレイバー』

そういえば観てなかったなこれ、ということで観てみた。 本作は、機動警察パトレイバーの劇場公開アニメ第三弾となる、のだが前二作の『機動警察パトレイバー the Movie』『機動警察パトレイバー 2 the Movie』――まあいわゆる「押井版」と比べると知名度とい…

そんな希望:映画『SAND LAND』

本当に泉なんてあると思うか? 『SAND LAND』より 28日に鳥山明の漫画原作の映画『Sand Land』を観に行った。レイトで久しぶりに観客自分一人という事態。ホラーじゃなくてよかった、みたいな。映画館の暗がりで一人っていうのは地味に怖いところはあるが、…

梶龍雄『葉山宝石館の惨劇』

Impression 徳間が行っている本格ミステリ者への文化事業――梶龍雄の作品復刊も着々と進んでおり、これまで「驚愕ミステリ大発掘コレクション」として『龍神池の小さな死体』『清里高原殺人別荘』が、「青春迷路ミステリコレクション」として『リア王密室に死…

東川篤哉『中途半端な密室』

かつて光文社で本格推理短編を公募し、鮎川哲也が選者となって選ばれた作品をまとめた『本格推理』という文庫シリーズがあり、後に二階堂黎人が選者を引き継いだ『新・本格推理』と続いた。このシリーズには、東川篤哉の他にものちにデビューする作家たちが…

カーター・ディクスン『五つの箱の死』

本作については、カーの作品の中で正直なところ、あまり顧みられていない作品というのが通説というか、江戸川乱歩のカー問答に始まり、カーを語る文章のなかで特にほめている記述は見当たらない。そんな状況を「奇想の本棚」の製作総指揮者は嘆き、さらにこ…

退屈な少年が見る家族の肖像:鈴木悦夫『幸せな家族 そして その頃はやった唄』

かつて読んだ人間に衝撃を与え、そのぬぐいがたい経験が一部で地下水脈のごとく語り継がれていたという児童書。それがこんど、めちゃくちゃ本を読みこんでいるフォロワーさんが解説を書いて中公文庫で復刊するということで、なんかいてもたってもいられなく…

All You Need Is Love……/and the others:映画『インディージョーンズと運命のダイヤル』

タイトルの英語が意味の通るものなのかは、わからない…… introduction 伝説の考古学者にして冒険者、その第五作目にしておそらく最終作。 このインディ・ジョーンズというシリーズは、自分にとって少し特別な思い入れがある。映画を観始めた最初期の頃の記憶…

小川洋子『沈黙博物館』

「映画は語られることで映画になる」これは、押井守がよく言う言葉だ。ものごとは、それそのものというよりは、誰かによって語られることで姿が見えるようになる。そういえば、『同志少女よ、敵を撃て』でも押井の言葉を思い出すような読書体験をした。「同…

三巻あたりで読むのが途絶えてた『映像研には手を出すな』をなんとなく再度手に取り始めた。正直、四巻あたりは眠かったのだが、五巻後半から面白く感じはじめ、現行の八巻まで読んだ。 映像研は、良いなと思うところはあったけど、当時の「ブーム」的なもの…

目の前に、石のような言葉が遺る:宮崎駿『君たちはどう生きるか』

※ネタバレ前提で語ってますが、書いてる本人もだんだん何が何だかわからんくなってます。 なんかすごいヘンな映画を観たような気分だった。二度目を観れば何とかまあまあ流れは整理されるが、やはり奇妙という印象は変わらない。たぶん、宮崎作品の中でいち…

なんかイーロンがツイッターに制限をかけ始めてて、本格的にツイッターが使えない状況になってしまっている。一時的というがどうなることやら。これぞネット世界のバベルの塔かはたまたディアスポラか……離散するなら離散するでまあ、いいんじゃないの、ネッ…