蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ミステリ感想まとめ その9

遠坂八重『ドールハウスの惨劇』 ドールハウスの惨劇 作者:遠坂八重 祥伝社 Amazon 第二十五回ドイルドエッグ賞受賞作。早くもシリーズ第二作が発売予定らしい。 たこ糸研究会という妙な部活動の傍ら、学内便利屋をしている滝蓮司と卯月麗一。ある日蓮司が学…

それは、いつか消えてしまうもののつながり:町田洋『砂の都』

人は生きる墓標だ 同じ人間が常に死に続ける 本作は『夜とコンクリート』『惑星9の休日』で独特の“間”、というかある決定的な“瞬間”をセリフや線を極力削いで描く著者特有の漫画の質感を、さらに推し進めた作品になっている。 『夜とコンクリート』は純粋な…

そばを打ちたいとか、そういえば父親は言い出さない。※内容はタイトルと全然関係ないです。

『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』観た後に、最新作の『竜とそばかすの姫』も観てみた……確かに、嫌われる理由もよく分かる。いや、なんていうか色々奇妙というかヘンな感じ。よくある批判の感情移入ができないとかいうのはどーでもいいんだ…

映画『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』

細田守によるデジモン劇場版の二作目。2000年制作。 細田守が長編劇場映画を監督する以前の40分の短編作品でありながら、この作品を監督のベストに推すファンがいまだに多い一作。また、初のオリジナル長編アニメ『サマーウォーズ』のプロトタイプともいわれ…

スプリガン劇場版(1998)

あらすじというやつ かつて人知を超えた科学を持つ何者かが残した遺跡群。それらを悪しきものから守れというメッセージを真摯に受止めた人々により、民間組織アーカムが結成された。そしてアーカムが擁する特殊エージェント――彼らは遺跡を守る妖精にちなみ「…

創元ライブラリの中井英夫全集[6]『ケンタウロスの嘆き』をペラペラ見ている。「ケンタウロスの嘆き」に収録されている作家・作品論や書評は何度読んでも素晴らしいのだが、「黒鳥の旅もしくは幻想庭園」に収められている、『日本人の貌「非国民の思想」…

しゅわっち

一応、これ公開後しばらくして書いたやつなのだが、こういうネガティブな感想って、好きな人が読めば当然いい気はしないだろうし、嫌われるだけであんまり「得」なことはないんだってのはわかってはいるのだけど、当時見た人間の正直な感想としてとりあえず…

その行き先:本多正一『彗星との日々―中井英夫との四年半―』

死んだら「ひと」の心の中へ行く。 結構読もうか読むまいか迷っていた。 なんていうか、自分の中である種理想化されていた作家の最晩年。一応のところ、その「現実」を話には伝え聞いていた部分はあった。人によっては孤独であり、まあ、「悲惨」と言う人も…

だらだらと『ゆるキャン△』の劇場版を見ていた。 なんというか、テレビ版の壮大、じゃないな、長大な後日談を見ているような感覚だった。映画として面白いとか面白くないとかじゃなくて、彼女たちの人生の延長、その日常を画面越しに眺めているような感覚。…

松本賀久子『ジャミラ祈念日/被爆者ゴジラ』

君が 地球せかいだと認めたのは どこの皇子でもなく 何の天才でもない ひとりの子供 <メフィラス>より 2021年に新型コロナで逝去した詩人による、初代ウルトラマンの怪獣・宇宙人に焦点を当てたユニークな詩集。 戦後まもなく生み出され、高度成長期ととも…

ハリボテな幽霊屋敷に潜むもの:ジョン・ディクスン・カー『幽霊屋敷』

あらすじ 執事がシャンデリアに飛びつき、落下したそれに押しつぶされるという不可解な事件が発生した屋敷。その過去のいわくに興味を持ち買い取った新しい持ち主により、幽霊パーティーが開かれるが、今度はそこで不可解な殺人事件が起きる。それを目撃した…