蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2021-01-01から1年間の記事一覧

2021 12 31

なんだかんだでまた年が終わっていく。今年も別になんかしたわけじゃない。相変わらず自堕落に年を取っていく、それだけだ。まあ、大したことない自分自身のことはともかく、今年もいろんなフィクションに出会えた。それで十分だといえば十分に違いない。 今…

笹沢左保『流れ舟は帰らず』感想

木枯し紋次郎――三度笠に長い楊枝をくわえ、口癖は「あっしには関わりのないことでござんす」――というドラマシリーズ、それが読む前の大まかなイメージというか、あいまいな情報でしかなく、私はこのシリーズが「必殺」や「子連れ狼」みたいなハードボイルド…

笹沢左保『招かれざる客』感想

有栖川有栖選 必読! Selection1 招かれざる客 (徳間文庫) 作者:笹沢左保 徳間書店 Amazon Impression かつて「新本格」、という言葉があった。というと、綾辻行人を嚆矢とするムーブメントが真っ先に思い浮かぶかもしれないが、それよりも前にその言葉を冠さ…

ゾンビの夜明け前:映画『ホラー・エクスプレス ゾンビ特急“地獄”行』

ゾンビ特急"地獄"行き(字幕版) クリストファー・リー Amazon Impression 今年のクリスマス、皆さんいかがお過ごしだろうか。私はいつもの通り一人でホラー映画を観ていた。定期的におかしくなる鼻のせいで(多分蓄膿)何を食べても異様なにおいがダイレク…

もうすぎちゃったけど、十二月十日、またふたたび黒鳥忌がやってきたということで、なんか中井英夫について書いてたっけと探したらメインで書いてたのは一つだけだった。 kamiyamautou.hatenablog.com 中井英夫というか『虚無への供物』についての思い出話み…

ミステリ感想まとめ5

そこそこミステリ読んでいたので、まとめて感想を書いて行こうかと。極力ネタバレは避けているつもりですが、どうなのかはわからないよ(え)。 では、とりあえずザーッとした感じで。 早坂吝『四元館の殺人―探偵AIのリアル・ディープラーニングー』 四元館…

SF手法とマンガ・アニメ的ファンタジーによる「ファンタジー」:陸秋槎『盟約の少女騎士』

Impression 中国人で日本在住の作家、陸秋槎。これまで日本で翻訳された著作はデビュー作の『元年春之祭』、『雪が白いとき、かつそのときに限り』『文学少女対数学少女』。ミステリの、特にロジックのあり方へ切り込んだ意欲的な作品を書いてきた著者だが、…

『メルカトル悪人狩り』感想

メルカトル悪人狩り (講談社ノベルス) 作者:麻耶雄嵩 講談社 Amazon 「愛護精神」 いささかぎょっとする始まりで不穏な空気を漂わせつつも、他愛のない形にすかしつつ、美袋に絡みつく大家からのどうでもよさそうな依頼。それを一応、メルに相談すると案の定…

マイケルさん

ハロウィンの夜に観に行きました。『ハロウィン Kills』、自分を含めて五人くらい観てたかな。 ジョンカー・ペンターによる傑作から早40年余り。シリーズも今作で12作にのぼり、かなり息の長いシリーズとなっているわけですが、2018年にデヴィッド・ゴードン…

シリーズの終り方:『007 no time to die』

ダニエル・クレイグによる007の最終作。シリーズの終わりは、第一作のカジノロワイヤルから続いた物語、そしてヒーローとしてのジェームズ・ボンドに決着を見せた作品となっていました。なかなか良かったですね。 ※ネタバレ前提で語っていきますので、そのつ…

先日(といっても結構前だが)、麻耶雄高の『夏と冬の奏鳴曲』が装いも新たに完全改訂版として復刊された。この作品、本格としては異色または異様な作品ひしめく麻耶作品のなかでも、ひときわ異彩を放つ作品であり、一部本格ファンの中には、魅せられたよう…

われわれと同じ「怪獣」へ

先日21日の二瓶正也氏の訃報を受け、「故郷は地球」を観返したいなあ、という思いが湧きあがり、DVD借りてきて観返してみた。 ※ネタバレ前提でこの作品について書いていくのでそのつもりでお願いします。 ウルトラマン第23話「故郷は地球」といえば、『ウル…

円弧の閉じる一瞬が永遠となる:映画『Arc アーク』

Impression ケンリュウの短編「円弧」の映画化ということですが、読んだことあるはずなのに全く忘れていました。なので、かなり新鮮に楽しめたと思う。すごくいい映画でした。久しぶりに実写の邦画を観たし、ここまでいい映画を観たのも久しぶりな気がしまし…

千街晶之編 感染ミステリー傑作選『伝染る恐怖』

千街晶之による感染をテーマに、収録作を年代順に並べたミステリアンソロジー。この状況だからこそ読まねばと思いつつ、結構積んでいた。 この本が出版されてから3か月余り。ワクチンの接種が始まっているものの、状況が好転する兆しはあまり見られない。そ…

この文章は、結構前に書いて、どうしようかな、と悩んで結局飲み込んだ文章だったのだけれど、それからずっとどこかで引っかかったまんまな気分で迷っていた。それで、やっぱり外に吐き出したい思いもあって、今さらな感じで表に出すことにしたのだった。 こ…

ミステリ感想まとめ4

だいぶ前に読んだ本たち……やはり感想は早めに書いておかないと色々忘れてしまう……。なんとか思い出しながら書きました。 玩具堂『探偵君と鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる』 玩具堂久々の小説が刊行されました。めでたい。白眉は…

上間陽子『海をあげる』

半分つぶされた虫のように、地面の上をのたうちまわるような打撃をうけた人々には、自身の身に起こったことを表現する言葉がない ――シモーヌ・ヴェイユ 子供のとある時期、私は海とともにあった。住んでいた小さな町の学校のすぐそこには、生活排水が垂れ流…

書いてて好きだったやつベスト

海外ミステリを読み込んでいて、自分もよく参考にしているぼくねこさんのこちらのブログ記事を読んでですね、 www.bokuneko.com 私も四年目に入って、自分的にはよく頑張ったけど特に読まれていない記事がたくさん(というかほとんどだけど)できたので、真…

映画『フェラーリの鷹』

Impression 映画の感想も滞っているというか、最近あんまり映画観なくなったんですよね……。映画館の時短営業で、映画館にもあんま足が向かなくなっちゃったし。DVDも借りては観ないで返すのを繰り返すありさま……。 そんな中で、だいぶ前に見た観た一本。1977…

ミステリ以外、その他感想まとめ1

ウマ娘のアニメ観て、アプリゲームやってる日々。 本はあんまり読めてないし、そもそも去年読んだ本の感想がなかなかかけなかったので、結構溜まってしまっていた。 とりあえずはなんとか、という感じでようやく書き出しました。 『花火』 ショートショート…

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第七話『祝福の名前』感想

あらすじ 怪我から復帰し、その復帰戦である大阪杯を難なく一位で終えたマックイーン。彼女が次に目指すのは再び春の天皇賞、その三連覇だ。それに向けて人々の期待も高まるスタンドの中、一人のウマ娘が次の春の天皇賞を辞退しようとしていた。彼女の名はラ…

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第六話「なんのために」感想

あらすじ 春の天皇賞、マックイーンに負けたテイオーは、結果として無敗の夢が破れ、三冠とともに当初の目標を失ってしまった。会長――ルドルフのようにはもうなれない。どこか気の抜けたテイオーはその後のレースも身が入らず、有馬記念は11着と惨敗してし…

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第五話『無敗と連覇』感想

あらすじ ついにTM対決の春の天皇賞がやってきた。このレースのためにそれぞれ弱点を克服すべく練習に励んできた二人。無敗のテイオーか、それともマックイーンが二連覇を果たすのか、世間の盛り上がりも最高潮に達するなか、トレーナーの顔はすぐれない。ど…

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第四話「TM対決」感想

あらすじ マックイーンに続き、テイオーも大阪杯を余裕の走りで快勝。春の天皇賞に向けて、二人はトレーナーから課されたそれぞれの練習をこなす。そんななか、テイオーに続き、無敗で三冠ウマ娘に挑戦する新たなウマ娘が。彼女の名は、ミホノブルボン。短距…

読書に飽きた時とか、なに読もうか迷ってる時、そして、何より何をどういうふうに書いたらいいのか迷った時、僕は大抵、伊藤計劃の映画時評集や伊藤計劃記録を読み返す。なので、彼の書いた小説よりも読み返している。 なんというか、すごく好きなのだ。たぶ…

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第三話『出会い』感想

第三話は、怪我が癒え、無敗を目指すテイオーとそのライバルであるメジロマックイーンの出会い、そして来たる春の天皇賞対決に向けて、まずはメジロマックイーンの前哨戦である大阪大賞典のレースが描かれました。 しかし、冒頭から、テイオーが部屋の「目指…

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第二話『譲れないから!』感想

なんてことだ……。どこか不穏な影がちらつく第一話で、緊張して臨んではいた。しかし、ここまでのものがはやくも二話で展開されるとは。第一期も確かに、「泣ける」シーンや展開はあったけど、実際に泣いてしまったのは今回が初めてですね。というか、まった…

自分が尊敬していた人が死ぬよりも先に遠くに行ってしまうことがある。私はそれを島田荘司という人によって味わうことになるとは夢にも思わなかった。彼が6日のトランプ支持者が連邦議会を襲うという、民主主義そのものへの挑戦を、自由への狼煙であると言わ…

ウマ娘 プリティーダービー Season 2 第一話「トウカイテイオー」感想

ついに始まりましたね。何が? ウマ娘プリティーダービーに決まってるだろーが! 1月4日に始まった第一話、私は第一話再生マシーンと化し、Twitterで感想をあさり続けることで一日をつぶしました。正直、自分でもなんでそこまでやってしまうのかよくわかりま…

とりあえず、なんだかんだで一年が過ぎた。 やろうと思っていたことは、特に達成できずに終わった。 悲しいことだが、いつものことだ。 このブログの更新も、かなり停滞している。なんというか、パソコンを開いても文章を書くということは、難しいものだな、…