蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

映画

そのわけは天の上に:映画『明日、君がいない』

ツイッターの相互フォロワーである青さん@8823_blue が、御自身のブログ『偽物の映画館』で紹介されていた映画に興味を持ち、観てみました。 映画のタイトルは『明日、きみがいない』(原題は『2:37』)。監督は ムラーリ・K・タルリ。 青さんの紹介記事はこ…

悪魔のドールハウス&箱庭:映画『ヘレディタリー/継承』&『ミッドサマー』

※軽くネタバレとか踏んでいると思うので、そのつもりで読んでください。 悪魔がドールハウスや箱庭を作っている。そこには一見、影や悪意の気配はしない。だが、普通とはどこか違う匂いが少しする。悪魔はそこに心が傾きそうな人形を入れ、その心を針でつつ…

消えないニオイ:映画『パラサイト 半地下の家族』

『パラサイト 半地下の家族』を観てきたので、とりあえずその感想を。ちょっと内容に触れたりするので、観てない人は観てから読んでください。あらすじは略。 なんていうか、キツイ映画だった。別に面白くないというわけではない。映画としてはとても面白い…

素晴らしい実写化:映画『夏、19歳の肖像』

島田荘司の映像化は、本邦でも近年になって多数作られているのだが、台湾で制作されたこの『夏、19歳の肖像』がたぶん一番いい出来だろう。原作を基本としながら、現代の話としてスマートフォンを有効活用し、サスペンス性やミステリ性を底上げして、原作の…

彼らが“ぼくら”になる7日間:映画『ぼくらの7日間戦争』

宗田理の『ぼくらの七日間戦争』といえば、ジュブナイルの金字塔で自分も小学生高学年から中学生の時にこの作品に触れ、シリーズを結構読んだ覚えがある。『ぼくらの魔女戦記』の一巻の最後あたりがたぶん一番好きだ。 このシリーズとズッコケシリーズやかぎ…

あの夏、終わってしまった何かに:映画『Summer of 84』

閑静な郊外。そこには見知った穏やかな人々がいる――そういうことになっている。 しかし、誰もその心の裡を知りはしない。お互いが本心を見せたりはしない中、ふと疑いを抱くとき、そこを覗くことは何を招くのか。 この映画は、80年代のノスタルジックな、し…

狂気が見た白昼夢:映画『まぼろしの市街戦』

まぼろしの市街戦≪4Kデジタル修復版≫ [Blu-ray] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 2019/08/07 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る 名前は聞いていたけど、観たことがなかった映画。今回、デジタル修復版が出て、気軽にに観れるようになっ…

ライミ印の笑えるホラー:映画『スペル』

サム・ライミ作品。『死霊のはらわた』を観れば分かるが、彼のホラーはきちんとしたホラー演出で驚きつつも観てるうちになんだかドツキ漫才というか、スプラスティックコメディめいた展開になっていき、ついには恐怖よりも笑いが先に来るようになるのだ。 こ…

レオーネという西部劇の思いで。

マカロニ・ウエスタン、結構好きなんですよ。まあ、どのジャンルに対しても言えるんですが、マニア的な取り組みで臨んでいるわけではないので、半可通ではあるんですが、大学生のころに結構ハマって、観てたことがありました。 最初に観たのは、あの三大レオ…

喧騒と静寂、新しい時代と去りゆく者たち:映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』

Once upon a time in the west――むかしむかし、西部で。 『ウエスタン』という邦題で親しまれてきたセルジオ・レオーネの一大叙事詩であります。そして今現在、そのオリジナル版が日本初公開で劇場にかかっているのです。一応、2時間45分版のそのオリジナル…

笑い者が世界を笑うまで:映画『JOKER』

とりあえず、迷っていたら観に行ってほしい。こんなにも笑い声が悲しい映画はそうない。 どこまでも孤独な人間が、ささやかだか自己を規定していたものを少しづつ削られてゆくさまは、別にこの映画に限ったことではなく、“いまここ”にある現実でもある。どこ…

君と僕であなたと私の物語:映画『HELLO WORLD』

『HELLO WORLD』観てきましたよ。イーガンでディックでマトリックスな青春ラブストーリーと言えばいいのか。結果としてはなかなか面白かったです。 とはいえ、やはりイーガンというか、この手の量子力学ガジェットSFは頭がこんがらがる。時間とか空間とか、…

ヘンはヘンだが楽しい:映画『サイン』

『ジョーカー』の予習というかなんというか、ホアキン・フェニックスの映画を観とくか、みたいな感じになり、いまさらというチョイスですが未見だったこれを観てみました。自分にとってホアキン・フェニックスは、『グラディエーター』のシスコン皇帝なんで…

好きなヒーロー映画

ヒーロー映画。ここでは邦画以外のアメリカンコミックを中心としたヒーロー映画、いわゆるスーパーヒーロー物、そのなかで自分が好きな映画を挙げてみたい。 まあ、実のところここ最近はマーベルを中心としたスーパーヒーロー映画ってやつには食傷気味という…

さだめられた結末を見つめる:『さよならの朝に約束の花をかざろう』

ちょっと前に見た映画の話。というか、だいぶ前の話になるが、一昨年はクリスマスに『ゴケミドロ』観たので、今回は『サイレントヒル』を観ようと思ってたんですよ。しかし、家人が劇場で観てすごく良かったからこれを観ろ、泣ける、みたいな感じで勧めてき…

影絵の悪魔:映画『狩人の夜』

人を裁くな。あなたがたも裁かれぬように。 マタイ伝 七章 1955年、イギリスの俳優チャールズ・ロートンが一度だけメガホンを取ったという作品。当時はさして評価されなかったらしいのですが、少なからずの後続の映画人たちに影響を与え、また支持されて、少…

ミステリ映画の快作:映画『ロスト・ボディ』

ロスト・ボディ [DVD] 出版社/メーカー: 松竹 発売日: 2015/10/07 メディア: DVD この商品を含むブログを見る 『インビジブル・ゲスト』というスペインのオリオウ・パウロ監督の傑作ミステリがあるのですが、その製作スタッフたちによる前作がこの『ロスト・…

IMAXで観てきた。

観てきた。ブレランを。『ブレードランナー ファイナルカット』を。 いまさらといえば今さらだ。しかし2019年11月のロサンゼルスは、相も変わらず「未来」の先端で、果たしてフィクションはこれに変わる新しい「未来」のパラダイムシフトを起こせるのか、い…

自ら踏み越えようとする人間の深淵:『ザ・バニシング―消失―』

1988年に公開された本作は、その評価とは裏腹に長らく日本で劇場公開されないまま、キューブリックが震撼したという言葉とともに、ちょっとした伝説の映画として、映画ファンの間で語り継がれてきました。その映画が、ようやく日本で劇場公開され(DVDは発売…

少女の運命を世界が引き受けること:映画『天気の子』

観てきましたよ、新海誠の最新作を。とりあえず感想に入る前に、私個人の新海誠作品との距離感というか、遍歴みたいなものを書いておきましょうか。(あ、先に言っておきますが、あらすじはめんどいんで省略しますね) 新海誠の名前を知ったのは一応、その最…

ボンクラ・マッドマックス 映画『ターボキッド』

ターボキッド [Blu-ray] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 2018/07/04 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る この映画、チャリンコマッドマックスとか言われてたりしますけど、それなんか違うというか。確かに世界観はポストアポカリプスで…

だだっ広い孤独:映画『荒野にて』

確かにわれわれ人間は弱く、病気にもかかり、醜く、堪え性のない生き物だ。だが、本当にそれだけの存在であるとしたら、われわれは何千年も前にこの地上から消えていただろう。 ――ジョン・スタインベック 孤独の風景。そのイメージはどんなものだろうか。部…

炎とその一瞬の静けさ:映画『プロメア』

CGアニメの一つの到達点といっていいのかもしれない。素晴らしいアクションが、アニメーションの“動き”の快楽が横溢している映画であり、早くも今年ナンバーワンのアクションアニメ映画が出てきちゃったかもしれない……というと気が早すぎるかもしれませんが…

ヒーローなんかじゃない:映画『タクシー運転手』

ヒーローでも何でもない男がいる。彼は貧しいタクシー運転手で、家賃を滞納しつつ娘と一緒に暮らしている。その日を生きるために働いている、ごく普通の男だ。初めはただ、支払いのいい外国人を乗せる仕事を耳にし、それをかすめ取って一儲けしようとしただ…

映画という鉤爪:映画『マッドボンバー』

マッドボンバー [Blu-ray] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 2018/05/09 メディア: Blu-ray この商品を含むブログ (1件) を見る 決してものすごく細部まで作りこまれた作品ではないのだけど、強烈で忘れがたいものとなる、そんな映画がある。この作…

のっぺりとした絶望の世界で:映画『太陽を盗んだ男』

DVD観て、そういえば昔、こんなの書いてたなというのを思い出したので。 『太陽を盗んだ男』――。長らくカルト的な扱いを受け、映画好きたちがひそかに、しかし脈々と語り継いできた伝説の映画は、やがて多くの支持を得てオールタイムベストなどの常連となる…

それは、過去の希望の姿:映画『イカリエ₋XB1』

イカリエ、なんだか不思議な語感。聞きなれないこの言葉は、旧チェコスロヴァキアの映画のものだ。 1963年。鉄のカーテンの向こう側で、『2001年宇宙の旅』(68年)に先駆ける形で生まれたSF映画。そしておそらくキューブリックのそれに何らかの影響を与えた…

本当のプロパガンダは「怖く」ない:映画『NO』

NO (ノー) [DVD] 出版社/メーカー: オデッサ・エンタテインメント 発売日: 2015/04/02 メディア: DVD この商品を含むブログ (6件) を見る プロパガンダ。その言葉で何が思い浮かぶだろうか。いかめしい指導者の肖像画やポスターが学校を始めとする公共施…

暗くてしんどいよ:映画『湿地』

“社会派ミステリ”ってやつの褒め方って、結構聞いてるとイラっとしません? 私はめちゃくちゃイラっとします。これぞ読み応えのある小説とか、重厚とかやたら言ってきて、だからなんだよ、みたいな。重々しければ小説としての価値が保証されるのでしょうかね…

幻想は地べたを這いずり始まりを目指す 映画『ガルム・ウォーズ』

久しぶりに観たんで。あ、一応ネタバレで語るので注意です。 『ガルム戦記』――プロジェクト『G.R.M』。押井ファン、特に長年のファンには思い入れがあるタイトルだろう。そのパイロットフィルムを見て、日本がハリウッドを凌駕するSF超大作を世界に問う「幻…