蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2021 12 31

 なんだかんだでまた年が終わっていく。今年も別になんかしたわけじゃない。相変わらず自堕落に年を取っていく、それだけだ。まあ、大したことない自分自身のことはともかく、今年もいろんなフィクションに出会えた。それで十分だといえば十分に違いない。

 今年は頑張って新刊ミステリを追ってみた。自分にしては頑張った方だが、供給量がすごい。新しい質のいい作品が次々と出てくるし、書き手も豊富だ。新本格から三十年余り、本格ミステリの層もかなり厚くなったのではないかと思う。とても喜ばしいことだ。

 読んだ中だと今年はなんだかんだで『兇刃邸の殺人』が面白く楽しかった。本格ミステリをベストセラーとして書き得ることができるという才能は実のところそう多くない。そう考えると今村昌弘の存在というのは現在の本格ミステリにとって得難い書き手だと思うのだ。もちろん、そのほかの作品たちもそれに劣らぬ作品たちばかりだったのは間違いない。

 ミステリ的な傾向だとやはりブームな感じで特殊設定ミステリが多く出てきたのだけれど、それらも、ミステリの可能性を広げる試みが様々凝らされていてよかった。自分は特に『孤島の来訪者』にハッとさせられたというか、この作品は自分的には今年のベストオブ手掛かり賞を与えたい作品で、評する側から見たら手垢というか、今時こういう手掛かりダメでしょ、みたいな古典的な手掛かりを特殊設定というフィルターを通して、鮮やかな手掛かりに生まれ変わらせている点に唸ったというか、やはり作る側の凄味みたいなのを感じた。『時空犯』も、特殊設定によって通常ではありえないけどものすごくシンプルな手掛かりが生まれていて、この作品の手がかりも印象深かった。

 あと、『袋小路くんはクローズドサークルのなか』や『仮面仕掛けのエンドロール』のように、ミステリの形そのものが興味深い作品もあって、とても充実していた。

 ガチガチのロジックミステリも豊富で、『アンデットガール・マーダーファルス3』『蒼海館の殺人』『僕が答える君の謎とき』『僕が答える君の謎とき2』『或るギリシャ棺の謎』と、これほどロジックに力が入った本格が立て続けに刊行された年もないのではないか。まさに当たり年だっとと言えよう。特に『僕が答える君の謎とき2』は、一つの推理から連鎖的に展開され、クラス全員がついた嘘を暴いていくロジックの緻密性は凄味があった。ただ、キャラクターや物語自体になかなか入りづらい面が、これらのロジックミステリにはあったことは否めなかったなーという感じではあった。

 そういえば今年はいつもに輪をかけて海外ミステリを読まなかった気がするけど、『自由研究に向かない殺人』はかなり素晴らしかった。私の好きな地方都市っぽい街を舞台に少年少女が駆け回って過去の殺人事件の再調査をする。飽きさせない展開力がすごくて、とにかく読んでて楽しすぎた。調査も現代的なSNSや携帯のカメラや動画、メールなんかを駆使した捜査が最高だし、ミステリとしての構図もそれを暴く手がかりも鮮やかで、演出も映画的で巧い。続編があるらしいのでとても楽しみにして待っている。

 ミステリ以外だとやはり『海をあげる』と『まとまらない言葉を生きる』がとても良くて、この二つは今年読んだ本のベストだろう。どちらもエッセイで、今の時代や人間性を鋭く切り取って突き付けてくる。なかなか感想はまとまらないけど、定期的に読み返していきたい。

 映像については、今年はあまり観れなかったなあ、という思いが強い。アニメも映画もそこまでだった。映画は『サイダーのように言葉が沸き上がる』が一番好きだったかも。ポップなアートワークに俳句という言葉で恋を彩る過去の郷愁もすがすがしい恋物語でした。あと、『Arc アーク』がマジでよかった。

kamiyamautou.hatenablog.com

オールタイムベストに入れたいくらい好き。あと、『由宇子の天秤』は、好きというか、すさまじい力で切りつけられた映画で、映画に殴られるタイプの経験をいやというほど味わった一作。こちらも忘れがたい、というか忘れられない映画。

 テレビアニメはもう『ウマ娘 Season2』でいいかな。それしかまともにいてないけど、これも自分的オールタイムベストな傑作だったので。各話記事がちょっと止まっているけど、ちゃんと全部書く。というか、今年はウマ娘に染まってた感があるな……初めてソシャゲを始めたし。競馬はそこまで興味ないけど、それなりに元ネタ動画とかは見た。にしても、正直ここまで大きくなるとは思わなかったことは確か。思えば、けものフレンズJRAコラボ時に、なんかこんなのあるとネットでからかわれているのを見てから以来だ。あのヘンなPVから走る気持ち良さを描いた楽しいアニメになって、三年後のSeason2で泣かされまくるとは自分も想像していなかった。アニメのSeason3を楽しみにしている。

 まあ、こんな感じ。そういえば、コメント欲しさにどっかの賞に小説送ったので、コメントもらったらどっかに公開しようと思う。

 このブログもなんだかんだで続けている。正直、モチベは下がっているし、毎回何を書けばいいのか、どうやって書いたらいいのか分からないばかりでひたすらダルイ。とはいえ、フィクションに触れた記録は極力つけておきたいので、あんまり間を開けずにとにかく書いていく感じでいきたい。今年は読んだり観たけど、間が空きすぎて書きかけがそのままになったものが積み重なってどんよりしてさらにやる気が下がる悪循環が起きたので、テキトーでもいいからとにかく書き留める意識を強くしていこうと思う。

 まあ、そんなわけで来年も頑張ろう。このつたない文字群を読んでくれている人にはひたすら感謝しかない。あと、同じようにブログを書いている人たちの更新とかも、ものすごく励みになった。ありがとう。