蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第四話「TM対決」感想

あらすじ

 マックイーンに続き、テイオーも大阪杯を余裕の走りで快勝。春の天皇賞に向けて、二人はトレーナーから課されたそれぞれの練習をこなす。そんななか、テイオーに続き、無敗で三冠ウマ娘に挑戦する新たなウマ娘が。彼女の名は、ミホノブルボン。短距離適性かと思われた彼女だが、彼女のトレーナーの理念である、スタミナは鍛錬で補えるに則り、過酷なトレーニングをつみ、無敗のまま皐月賞に挑む。圧倒的な強さで皐月賞を圧勝するミホノブルボン。テイオーはそんなブルボンを見て自分もまた未挑戦の長距離へ向け、意欲を燃やす。

 世間はそのテイオーとマックイーンの対決に向けて否が応でも盛り上がっていく。しかし、世間での評価はテイオー優勢。テイオーびいきの様相にマックイーンはいら立ちを募らせるが、彼女の“おばさま″の言葉により、テイオーとのレースではなく、自分自身のゴールを目指すレースをすることを決意する。
 テイオーとマックイーン。それぞれの想いと重ねた訓練をたずさえ、二人は決戦の舞台、春の天皇賞へと向かう。

 

感想

 今回は両者の春の天皇賞に向けた練習に焦点を当てながら、新たなキャラクターであるミホノブルボンのレース、そしてカノープスの面々やマチカネフクキタルの占いが取り持つギャル&お嬢様のダイタクヘリオスメジロパーマーといった、これからまた活躍しそうな面々を描いて、次の展開への布石をぬかりなく打っておくのですが、常にそこにギャグを織り交ぜていて、見ているだけでも楽しい場面になっています。モブたちもモブで終わらない印象深いキャラクターになっていて、一期以上にこの世界の奥行きを感じさせます。ウマ娘とそのレースが人々の生活に息づいてる感が確かに感じられ、それは人々のレースを楽しみにしている姿やメディア、そしてさりげない小物類ですね。今回は道路に敷設されていたウマ娘専用レーンがありましたが、ウマ娘専用の電話や美容院でのウマ娘用の穴の空いた椅子など、さりげないですが、そういうのが映るだけでウマ娘があるという世界を感じられてうれしくなりますし、グッとウマ娘の世界が広がります。

 また、第三話同様テイオーとマックイーンの決戦に向けてだけでなく、ブルボン&ライス、ヘリオス&パーマーといった今後のレースの役者をそろえるじっくりとした構成の中にギャグを織り交ぜる緩急が巧くて、スペシャルウィークによる前振りとマックイーンを交えたゴールドシップへの三連続のオチがなかなか強烈。構成が巧いだけでなく、退屈させない緩急が本当に巧いです。

 しかし、なんといってもこの回の真髄は、そんな目まぐるしい陣営の描写とギャグを貫く最後のマックイーンにかけられた言葉でしょう。

 テイオーびいきの世間に対する不満を漏らすマックイーンにメジロ家のおばあさまは、そんなマックイーンにがっかりしたと言い、彼女に昔読んだウサギとカメの話を持ち出して諭します。

「なぜ、カメが勝ったかわかりますか? ウサギはカメを見ていた。ウサギはゴールを見ていた」

 このセリフ一つで、この回がどんな回なのかを決定づけ、次回の予感をもにおわせる、そんな見事なセリフとなっていて、個人的にはこのセリフ思いついただけでMVPなところがあります。いろいろ描いて、ともすれば散漫になりそうなこの回に一本強力な筋を通す、そんなセリフがとても印象的な回でした。

 それにしても、今回の“おばあさま”の登場で、メジロの家が、単なる金持ちじゃなくて、レース界に君臨する大きな「家」であることがくっきりする感じなのもなかなか印象的でした。