蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第三話『出会い』感想

 第三話は、怪我が癒え、無敗を目指すテイオーとそのライバルであるメジロマックイーンの出会い、そして来たる春の天皇賞対決に向けて、まずはメジロマックイーンの前哨戦である大阪大賞典のレースが描かれました。

 しかし、冒頭から、テイオーが部屋の「目指せ三冠ウマ娘」を書いた紙の「三冠」をマジックで消す所が切ない。そして、これからを考えるとまた切ないという……。

 怪我も癒え、復調したテイオー。快調に飛ばす走りのシーンは復活を思わせ、またその疾走感も素晴らしいというか、本当に楽しそうに走っているのがよく分かるんですね。

 そして、Aパートは初詣やテイオーとマックイーンがそれぞれ年度代表ウマ娘、シニア代表ウマ娘として表彰されるという日常パートが軽快に描かれていきます。そういえば、表彰の際に新しい勝負服が授与されていました。これは、来たるゲームに実装されてそうなシステムの前振りもかねてという所でしょうかね。マックイーンは最初の勝負服で走っているレースシーンはそこまで描かれてないんですけどね……。

 無敗のウマ娘を目指すうえで、強い敵と闘ってこそだとするテイオーは、その相手としてマックイーンを指名。春の天皇賞で対決することを宣言し、マックイーンもそれを受け入れ、互いに競うことを確認します。二人の対決に沸く周囲。そして二人はその前哨戦のレースに向けて練習をスタートするのでした。

 その二人の対決まで、二期の裏主人公たちともいえるカノープスの面々で楽しさや笑いを添えつつ描き、Bパートではテイオーとマックイーンの出会いからライバルになるまで、そしてマックイーンの強さをきっちりぬかりなく織り込んでくるので、やはり脚本がとても堅実。一期のスペシャルウィークサイレンススズカとはまた違った組み合わせのドラマが楽しい。

 また、今回の見どころは何といってもマックイーンのレース。マックイーンの他を圧倒する走りの描写が素晴らしく、彼女の強い走りが印象付けられます。足自体の動きをしっかり描くためにも、勝負服ではなく、体操服のGⅡでこの描写が選択されているのもよく考えられています。シリーズ初の雨天でのレースというのもなかなか新鮮でした(実際の阪神大賞典でも雨)。第二期は、毎回レースに一期とはまた違った工夫をこらそうとするところが随所に見られて、本当に楽しみなんですね。

 そして、マックイーンに続き、新たな勝負服を身に纏い大阪杯(当時はG2、ウマ娘は現在基準なのでG1)に向かうテイオーで第三話は終了。今回も良かったですね。特に、カノープスの面々がとてもいい味を出しています。どうでもいいですけど、ネイチャとターボって妙に姉妹感がありますね。不思議。

 

  • 「むーりー」について

 ウマ娘のレースにおいて、一つの特徴的な表現になっているのが抜かれたキャラたちが口にする「むーりー」。ある種の分かりやすい様式美として親しまれている一方で、全員が真剣なはずのレースであきらめの言葉は気に食わない、という人も。まあ、その気持ちはわからなくもないですが、そのレースにおいて、誰が主役なのかをはっきりさせる演出としても必要なんだろうな、と思っています。第三話が顕著な気がするのですが、圧倒する存在に対して、果敢に立ち向かう存在のほうに、人はやっぱり目が行きがちなんだと思うんですよ。そこに感情移入する前に誰が主人公なのかと、その強さを印象付けるために「むーりー」は必要なんじゃないのかと思っています。気に食わないのは、そちらに感情移入しそうなのを阻害されているのも含まれているのでは、と思ったりも。まあ、とにかく、誰の物語なのか、レースの主役はだれかを明確にする上で、必要な演出の一つだと自分は思っています。そういう線引きは物語を作るうえで大事なところだと思うんですよ。