蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

映画『フェラーリの鷹』

フェラーリの鷹 HDリマスター [Blu-ray]

Impression

 映画の感想も滞っているというか、最近あんまり映画観なくなったんですよね……。映画館の時短営業で、映画館にもあんま足が向かなくなっちゃったし。DVDも借りては観ないで返すのを繰り返すありさま……。

 そんな中で、だいぶ前に見た観た一本。1977年のイタリア製。いわゆるカルト映画と化している本作だが、とにかく、カーアクションの迫力が良い、というかそれがすべてなところがある。イタリアの市街地を、今となってはクラシックな車が爆走するという絵面だけでも好きな人はアガるだろう。CGとかない時代だし、車がクラッシュした時、中の主人公代わりのマネキンの首が思いっきりボッキリ折れてるのがクッキリ映ってたりと、雑な部分はあるのだが、それはともかくその荒っぽい画面作りが、男たちのプライドをかけた車の、画面を疾駆する姿とマッチしていて、それを含めて楽しい映画だった。

 

あらすじ

 ローマに現れ、次々と銀行を襲う強盗団。レーサー崩れのリーダーを中心に彼らは、その卓越したドライビングテクで毎回警察の追跡を振り切っていく。

 一方、翻弄される警察の中に、覆面パトカーを乗り回し、毎回その危険運転スレスレのドライビングで上司に睨まれている刑事パウロがいた。彼は元レーサーの上司が、かつて危険を顧みないドライブテクで活躍していたことを羨望しつつ、今は自分を押さえようとしていることに不満を募らせていた。そんな中、現れた強盗団に挑むも、その無茶な追跡により、振り切られた際に車をクラッシュさせ相棒を亡くしてしまう。一度は辞表を出して警察を去ろうとするパウロ。しかし、上司はそんな彼にかつて自分が使っていたフェラーリを与え、パウロを強盗団と渡り合わせるべく、特訓を課す。さらに、強盗団の中に潜入する任務を与える。

 首尾よく潜入するパウロだったが、あと一歩のところで潜入がバレ、強盗団たちを逃がしてしまう。警察に組織を掴まれていた事態に、一旦は身をひそめるべきだという部下たち。しかし、窃盗団のリーダージャンは強盗計画を強行。案の定組織は警戒していた警察によって壊滅し、ジャンだけが逃げ延びるものの、パウロに追いつめられる。しかし、パウロはジャンを逃がす。二人だけの勝負――その約束を取り付けて。

 後日、ジャンはパウロの前に現れた。ジャンのシトロエン、そしてパウロフェラーリ。いま、二人の最後のレースが始まろうとしていた。

 

感想

 とにかく、フェラーリシトロエン――クラシックカーが市街地を爆走する、それがすべてな映画と言っていいでしょう。CGなんかない時代ですから、スタイリッシュに加工した映像的なカッコよさとかはないんですが、しかし、ぶっきらぼうな映像が、その瞬間を生のまま捕らえたようなインパクトを観る者に叩きつける。修正なんかできないし、最初に書いたように中のマネキンが堂々映っちゃってる一発撮り感満載の映像は、しかしそれでも映画的な緊張感や熱量にあふれています。

 シナリオだって、粗はあるし、最後の対決への持って行き方はけっこう強引です。しかしそれでもいい。二人の男が、言葉を交わすことなく相手を意識し、やがて避けられない対決へと向かう。そんな、運命を描いた映画なのです。

 男たちが己の体を削るように、車を削り、プライドをかける。スピード感やカッコよさは今の映像には及ばないのかもしれません。しかし、そこにはその時代特有の、一回こっきりの映画の荒々しさが、そしてむき出しの熱っぽさがあふれていて、だからこそ、最後の、花火のような男たちの激突と虚しさが観る者に刻印されるのです。

 しかし、最後のダイブはすごい。あれ失敗したらマジで死にそう。