蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第五話『無敗と連覇』感想

あらすじ
 ついにTM対決の春の天皇賞がやってきた。このレースのためにそれぞれ弱点を克服すべく練習に励んできた二人。無敗のテイオーか、それともマックイーンが二連覇を果たすのか、世間の盛り上がりも最高潮に達するなか、トレーナーの顔はすぐれない。どっちらかが勝ち、どちらかが負ける、勝負は残酷だ。そうこぼすトレーナーだが、スピカのメンバーたちはそれをたしなめる。二人はそんな風には思っていないはずだと。そして、二人がターフに現れる。春の天皇賞、無敗と連覇、運命のレースが今、幕を開ける。

感想

 いよいよ春の天皇賞。とにかく、三、四話と丁寧に描かれてきたテイオーとマックイーンの対決がじっくり描かれます。一期二期通して、たぶん最高の作画カロリーではないでしょうか。見せ方も迫力満点で結果を知っていても手に汗握るレースになっていたと思います。間違いなくアニメウマ娘のベストレースの一つでしょう。

 Aパートは人々の期待やテイオー、マックイーン二人の様子を中心にレースに向かってじっくり描き、緊張感が否が応でも高まります。そして、レースが始まるのですが、前述したようにシリーズ一といってもいいくらいじっくりとレースを描いています。レース自体も3200メートルと長く、まずレース場を一周するという描写自体が初だと思います。そして、その中でじりじりと様子をうかがう展開が緊張感を醸成させます。マックイーンを見据え、ここぞというタイミングでスパートをかけるテイオー。しかし、距離適性の差、レース経験の差、そして完全にゴールだけを見据えたマックイーンの差は埋まらず、逆にスパートをかける彼女との距離はジリジリと離れ、やがて他のウマ娘にもかわされていくテイオーの姿がツライ。

 三話、四話とじっくり土台を組んでからのこの五話が、最高な形で展開されていたと思います。詰まらない距離、遠のいてゆく夢というこれ以上ない残酷な形で突きつけられるその光景は、事実の流れを知っているとはいえ、なかなかつらいものがあります。

 そして勝敗が決し、おもわず泣きそうになるテイオーがそれをぐっとこらえて、マックイーンをたたえ、マックイーンもまたテイオーがいたからこそ自分はここまでこれたと返す。その瞬間に負けを自覚するテイオーの姿は悲しいものの、二人の姿はライバルそのものが純化したような姿でとても美しい。というか、テイオーに称えられた瞬間のマックイーンはめちゃくちゃ美しい。第二期はテイオーがコケティシュなかわいさ全開なのに対して、マックイーンはひたすら美しいですね。

 この回は走りで完膚なきまでに敗北するという挫折回ではあるのですが、両者の全力を出し切り、それをたたえあう姿は、テイオーの挫折の中にあっても美しさがある。それはある意味残酷な美しさなのだけれど。

 無敗の三冠、そして無敗と次々と目標が破れていくテイオーは果たしてどうなってしまうのか。どう描かれるのか、辛いとはいえとても楽しみです。

 それから、この回でこれまで何気なく観ていたエンディングの最後、ルドルフのアップが引いて幼いテイオーがインしてくる部分が、憧れが遠ざかるという演出に転化するのが悲しくもすごいですね。本当によく作りこまれています。