蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

ウマ娘 プリティーダービー Season2 第七話『祝福の名前』感想

あらすじ

 怪我から復帰し、その復帰戦である大阪杯を難なく一位で終えたマックイーン。彼女が次に目指すのは再び春の天皇賞、その三連覇だ。それに向けて人々の期待も高まるスタンドの中、一人のウマ娘が次の春の天皇賞を辞退しようとしていた。彼女の名はライスシャワー。あのミホノブルボンが無敗の三冠を賭けた最後の菊花賞において最後の最後で差し切り勝利したウマ娘であった。しかし、彼女に与えられたのはその勝利の祝福ではなく、人々が見たかった勝利を阻んだというため息とブーイングだった。ウイニングライブでも声をかけられるのは2着、3着のブルボンやタンホイザばかり。自分はいらない子なんだと思いつめるライスは、マックイーンに向かって春の天皇賞には出ませんと叫んで逃げてしまう。マックイーンから話を聞いたテイオーはチームスピカのリーダーとして、またライバルマックイーンのためにライスを説得しようとするのだが……

 

感想

 今回は、ライスシャワーというウマ娘にスポットが当たるお話となっています。ある意味、テイオーの陰みたいな存在でもありますね。勝てば称賛され、ウイニングライブでも大人気な彼女からすれば、勝つことで疎まれるということ自体が理解の外といえる。そんな彼女をマックイーンのために説得しようとするが、やはり巧くはいかない。スピカの面々でもそういう境遇は理解の外。スピカの中だけでは経験することのない境遇に立つウマ娘の存在。そんなライスシャワーという境遇のキャラクターを配置して、勝つということが祝福されない局面もあったりするという、純粋な勝負の裏面を描き出していきます。そういえば、久々のウイニングライブでもその祝福されない微妙な空気が描かれていました。勝者だけが立てる、しかもそのセンターだからこそ、めちゃくちゃキツイ。これは走りたくなくなってもしょうがないというか。一期以上に少なくなったライブですが、一期で描かれなかった面を描くことも含めてここで持ってくるかという使い方が巧い。

 そしてそんなライスの悲しみを受け止め、再起させるのはライスの憧れであり、ライバルであるミホノブルボンの存在です。彼女が唯一負けた存在として、ブルボンはライスをヒールではなく自分にとってのヒーローだと言います。たとえ人々から祝福されなかったとしても、あなたは私のヒーローだと。観客からは心無い言葉を投げつけられるライスシャワーですが、彼女を称賛する者たち――彼女と同じレースで競ったウマ娘たちはいる。

 擬人化したことでモデル馬を救済する方向性としては、怪我による死を回避するほかに、こういう形で、同じレースを出た者同士のつながりみたいなものが第二期は顕著です。競い合うライバル、正当に評価する存在という関係性が救いをもたらす。

 スピカの面々との追いかけっこの合間に、パーマー、ヘリオス、タンホイザやディクタスといった、彼女の走りを知るキャラクターたちによるライスへの走りへの評価をライスの耳に入れるという構成がコミカルな中にしっかりとこの回のクライマックスへの仕込みとなっていて、キャラクターの愉快な掛け合いなどで笑わせている間にしっかりと物語の導線を形作るウマ娘お得意の構成力が光ります。

 そして、今回は光と影の使い方もなかなかいい。基本的な演出ではありますが、最後にライスと対峙するブルボンとテイオーを光――夕日を背負った形で置き、背景の建物の影が落ちる位置にライスを配置したり、また、テイオーたち影を落とす建物とそろえることで、彼女たちの影にライスが入り込んでいるようにもなる。そういった、わかりやすいですが効果的な演出も見どころです。

 しかし、第二期は言葉の使い方というか、効果的な言葉が多いですね。四話の「ウサギはカメを見ていた、カメはゴールを見ていた」や六話の「夢は形を変えていく」そして今回の「あなたは私のヒーローなんです」という風に、物語を刻むような言葉が多く、その辺もとても好いですね。

 あと、なんとなくなんですけど、二期のテイオーの物語って変更された勝負服のイメージも手伝ってか貴種流離譚ぽいというか、挫折した彼女がまわりの様々なキャラクターたちの姿を見つめながらやがて、ファンの前に還ってくる、そんな物語の雰囲気を感じています。