蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2019-01-01から1年間の記事一覧

ケムリクサの11話にびっくりしたので、思わずこんな文章を書きなぐってしまった。一応、ネタバレは極力避けてますが、未視聴なら今すぐ観てください。 ケムリクサが11話でその全容が明らかになったことで、『けものフレンズ』の再来みたいになってきましたね…

暗くてしんどいよ:映画『湿地』

“社会派ミステリ”ってやつの褒め方って、結構聞いてるとイラっとしません? 私はめちゃくちゃイラっとします。これぞ読み応えのある小説とか、重厚とかやたら言ってきて、だからなんだよ、みたいな。重々しければ小説としての価値が保証されるのでしょうかね…

詩野うら『有害無罪玩具』

有害無罪玩具 (ビームコミックス) 作者: 詩野うら 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2019/02/12 メディア: コミック この商品を含むブログを見る これは、著者が2016年からWebに公開していた長編漫画のうち、表題作を含めた三本と最後の書下ろしである『盆…

透明感のある幻想:オブライエン『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』

不思議屋/ダイヤモンドのレンズ (光文社古典新訳文庫) 作者: オブライエン 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2014/11/21 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る フィッツ・ジェイムズ・オブライエン。彼はなかなか破天荒な一生を送った作家で、ア…

好きだからこそ闘う:山口つばさ『ブルーピリオド』

ブルーピリオド(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 山口つばさ 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/12/22 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今かなり来てる漫画というか、いいよと言われることが多くなってきたので読んだらヤバかった…

幻想は地べたを這いずり始まりを目指す 映画『ガルム・ウォーズ』

久しぶりに観たんで。あ、一応ネタバレで語るので注意です。 『ガルム戦記』――プロジェクト『G.R.M』。押井ファン、特に長年のファンには思い入れがあるタイトルだろう。そのパイロットフィルムを見て、日本がハリウッドを凌駕するSF超大作を世界に問う「幻…

私に衝撃を与えたミステリ10選

ツイッターでみんなやってたので、現時点の整理として自分自身の10作と、それについてそれぞれなんで衝撃だったのかを書いていこうかな、と。衝撃といっても、個人的な感覚とか結構あると思うし、どの部分が衝撃的だったのか説明した方が、その衝撃性が浮き…

生真面目でヘンな映画:映画『ヴィジット』

なんていうか、映画秘宝界隈でのシャマランへのアツい掌返し、というそーとー胡散臭い光景をしばしば目にする今日この頃。というわけでそういえばそんな監督いたな、という気分で久しぶりに手に取ったのです、M・ナイト・シャマラン監督作品というやつを。ま…

その瞬間、あなたはそこにいる:映画『ファースト・マン』

『ボヘミアンラプソディー』の感想を書いたときに、体験する装置としての映画がこれから増えていくだろうということを書いたが、この映画もまた、観る者にその過去の瞬間を体験させる映画である。「ボヘミアン」以上に徹底した体験追及型で、物語性や人物か…

アニメ・ウマ娘における“ライブ”の役割

BNWの誓いの記事に、ウマ娘のライブについて、視聴者は特にそれを期待していないと書いたが、アニメ・ウマ娘においてライブという要素は、本編の大筋とは別の形で重要な役割があると私は思っていて、今回はそのことについて書こうかと。 アニメ・ウマ娘には…

恐怖のチキン:映画『キラー・スナイパー』

Killer Joe メディア: DVD この商品を含むブログを見る というわけで、またもやフリードキン映画である。2011年公開の最新作で、ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞にノミネートされたりした、久々に脚光があたったフリードキン映画である。内容は……いつもの…

『ラ・ラ・ランド』の、町山さんの解説を観てて、後半の質問で、質問者が町山さんに、芸術、好きなものを追求するためには恋愛とか、家族的な幸せみたいなものは邪魔だ、とかみたいな、表現したりする場合は何か自分の中に欠落みたいなものを抱えていないと…

帰ってこれなくなった男:映画『ハンテッド』

ハンテッド [DVD] 出版社/メーカー: 日本ヘラルド映画(PCH) 発売日: 2005/07/06 メディア: DVD クリック: 22回 この商品を含むブログ (15件) を見る 恐怖の報酬に感動したということもあり、今回もフリードキンの映画である。この映画は観てなかったので、ち…

感想書くのメンドいな……というか、あんまりうまい具合に固まってくれないので、またも自分語りというか、そう、困ったときの自分語りです。 というわけで今回は、自分がなぜ本格探偵小説を、というかミステリを読むのか、ということについてひとくさり語って…

ケムリクサの感想も一応かいとこう。 1,2話でだいたい以前Webで公開してた自主製作版のリメイクを終えて、3話でいよいよエンジンかかってきたというところ。というか、やはり背景美術がいいですね。けものフレンズと違って、話ごとに環境がガラッと変わ…

生きながら死んでいる男たちの:ウィリアム・フリードキン『恐怖の報酬:オリジナル完全版』

映画ファンの中では伝説ともいえるウィリアム・フリードキンによる『恐怖の報酬』。そのオリジナル完全版を観てきました。ネタバレ前提的に語るので、まあそのつもりでお願いしますです。 『恐怖の報酬』――もともとは1953年製作のアンリ⁼ジョルジュ・クルー…

一応けものフレンズ2を観ました。 ……これ、どこを狙ってるんだろう。低年齢層を狙っているんだろうか。それにしては動物感はキャラクターから減じているような。 いや、なんていうかですね、個人的にけものフレンズの面白さって、CGモデルの動きにあったと…

言葉でどこまでもつながってゆける 笹井宏之『えーえんとくちから』

詩や短歌、それは僕にとって何とも言えないジャンルだ。一応、学校の教科書のものを目にしたことはあるわけで、「君死にたもうことなかれ」とか、「白鳥は悲しからずや」とか、なんかそんな感じのが記憶にある。古文の万葉集とか、古今和歌集とかその辺は全…

「体験」を再現する装置としての映画 『ボヘミアン・ラプソディ』

というわけで、新年初の映画はこれでした。おまけに恐らく人生初のIMAXで観た。ぶっちゃけ、同行者との時間の都合でIMAX字幕しかなく、えー、高い、みたいな感じで劇場に乗り込んでいったのですが、いや、観てよかったです。というか、これはIMAXで観るべき…

小学生の時だ。友人と合作で漫画を描き始めた時期がある。私としては本来小説を合作するつもりで誘ったのだが、うまく伝わらなかったのか、友人は勘違いしたか漫画を描こうぜ、ということになった。ノートというか、白い横長の雑記帳に何列かの線を引いたコ…

「高天原の犯罪」の構造 天城一『密室犯罪学教程』

探偵小説は読者に参加の夢を与えると称しながら、実際は読者を操作するにすぎませんでした。 『密室犯罪学教程』献辞より ※「高天原の犯罪」そしてチェスタトンの某作(ブラウン神父の童心収録作)に触れています。いずれもネタを割る、又は真相を示唆する部…