蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

しゅわっち

 一応、これ公開後しばらくして書いたやつなのだが、こういうネガティブな感想って、好きな人が読めば当然いい気はしないだろうし、嫌われるだけであんまり「得」なことはないんだってのはわかってはいるのだけど、当時見た人間の正直な感想としてとりあえず流してみるか、な気分になったので。そんなにみられるわけでもなし、どうでもいいや、みたいな。

 

 

 シン・ウルトラマン観てきて、そこそこ時間がたって、ツイッターとか見てると嫌でも流れてくる感想を見たりしているわけなんですが、人間の感動のツボってそれぞれな感じではあります。

 一応、周囲の観たいという人間の要請で二回も観に行くことになったのですが、二回目観ても、最後の何に感動してやればいいのか分からなかったです。自分が特に感じなくても、この辺が感動ポイントなんだろうなあ、みたいなアタリがつくというタイプでもなく、なんなのコレ……というラストは相変わらずでした。いやまあ、感動した・しなかったから良い・悪いとかでは全然ないのですが。

 個人的なウルトラマンの遍歴は、世代的には平成三部作で、後々ウルトラマン帰ってきたウルトラマンまでを履修した感じです。最近のやつは『ウルトラマンZ』くらいしか観てません。そもそもそこまでウルトラマン観てるわけでもないので、いささかドライになっているのかもしれません。

 全体的に嫌いというわけではないです。ただ、ひたすら、好きな人たちによる再現芸を見せられている感が強く(押井守によるとオタクというのものは“そのままやる”ものらしい。そうなの? まあ、庵野監督のかつての自主製作は確かに“そのまま”かもしれないが……)、かといって、それを見つけられたからといってなんかうれしいわけでもないという感じでした。とはいえ、ウルトラマンが初めてスペシウム光線を撃つシーンなんかは、これまでにないインパクトがあったりして、オープニングのウルトラQなシーンや怪獣戦など、相変わらず一回で読ます気ないテロップ芸とかに辟易しつつも、わくわくしたところが多々あったことは確かです。(スペシウム光線撃つところで、いちいちイオンがどうとか、プラズマ化してるとか説明がしつこいところも嫌でしたが)

 一番苦手だったのは結局のところ、セリフ回しですね。人間あんなにしゃべるっけ、みたいなのは、フィクションだからというのしても、また、アニメでよく出てくるにしても、ガヤとか説明役の人間みたいな役割分担してないのか普通。みんながみんな、自分のことしかしゃべらないし、自分がしゃべってることを聞かせる気がない感じでまくしたてるのって、結構嫌な奴感がしてしまうけど。まあ、SNS的な感じで気にならないのかもしれないですが……(“好き”をいかにまくしたてるかがSNS的美徳――ヤダなあ)。

 てか、みんな早口で専門用語をまくしたてる人間って、そんな好きなのでしょうか? シンゴジラもそうだけど、いったい何なのこの人たち……みたいな気にいつもさせられてしまいます。文章で読むならともなく、他人に伝える気あんまりない人のしゃべり方って、いわゆる「オタク」なほほえましさ、みたいなネタにされてる場合がよくありますが、自分にはあまり見ていて気持ちのいいものじゃないと思うのです。うっさい黙れ、みたいな凶暴な気持ちが湧きません? 湧かない? そう……

 あと、カメラアングルが実相寺なのはわかったからってくらいしつこくて、それしか好きじゃないの? みたいなうんざり感も少しありました。それに、本家はどっから映してるんだ? みたいな意外性とか工夫とかもう少しあったように思うのだけど。

 総じて、提出のされ方みたいなのがあんま好きじゃなかったかなという感じでした。まあ、物語面もシンゴジラとかもそうなんだけど、エリートの人たちしか画面に出てこなくて、それ以外は逃げ惑うか被害者になるくらいしか役割なく、その妙な均質性みたいなものが、個人的にはどうも窮屈な感じがしてしまいます。エリート主体の方がストレートに話が進んだりするんだろうけど、話が大きい割にはこじんまりとした感じで、人類が好き云々も私自身には何か響く物は特になかったというか、ウルトラマンが人類の何を見てたのかよく分からなかったし(本はやたら読んでたが)、長澤まさみがなんで泣いてるのかマジでよくわからなかったです。

 劇中の人間もウルトラマンも、観ている私にはあんまりよく分からなくて、ツイッターとかで時々流れてくる異種間同士の助け合い動物動画を見るみたいな感じなのかなあ、みたいなふうに納得するしかありませんでした。

 ただ、初代のウルトラマンがまとっていた明朗さみたいなものが少し感じられてその辺はよかったと思いますね。

 まあ、合わない時は合わないし、縁がなかったみたいな感じでしょう。そもそも庵野監督(監督は樋口真嗣だってば)の作品とは『トップをねらえ!』以外はあんま相性良くないですし。樋口監督作品の中だと、自分の中では悪くないほうです。いやまあ、『隠し砦の三悪人』も『進撃の巨人』もそんなに嫌いじゃないけど。

 

追:てか、何となくくすぶっていた「好き」な人たちが作っているシン何とかに対する噛み合わなさがここ最近読んだ『ジャミラ祈念日/被爆ゴジラ』に集約されているというか、たぶんすっぽり抜けたものがあの詩の中にあったような気がするのだ。