蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

そばを打ちたいとか、そういえば父親は言い出さない。※内容はタイトルと全然関係ないです。

 『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』観た後に、最新作の『竜とそばかすの姫』も観てみた……確かに、嫌われる理由もよく分かる。いや、なんていうか色々奇妙というかヘンな感じ。よくある批判の感情移入ができないとかいうのはどーでもいいんだけど、最後のDV親のところへ女子高生が単身乗り込んでしかも、なんか圧でひるませちゃうというのは、さすがにファンタジーにするにしては問題がある。ナウシカでもやらんのでは。いやもしかしたらあいつはやるかも……。

 それはともかく、構造もなんか変というか、色々なことが画面の中で起ってはいるのだが、どれもフラットというか、それらが組みあがって、映画としての像を結ぶという感じに乏しい。母親との物語、見ず知らずの人間への献身、ネットという匿名性の中での自己の開放、幼馴染との関係、どれもそれ単体ぽつぽつと存在しているだけで、それらが一つの構造を作るというある種のダイナミズムの欠如。なんなんだこれは……という感じではあるのだが、映像と歌はなかなかすごい。その歌唱シーンをはじめ、そこに至るまでの根拠みたいなのははっきりしないまま、単発単発ではそれなりにパフォーマンス力があるので、そのどれかに感情が動かされるというか、いちいち、なんで? みたいなものを考えずに、画面に映し出されるエモーショナルな情動と一体化できれば結構楽しめるのかもしれない。自分はそういうことはできないので、この映画はあんま評価できないというか、構造がヘンすぎてなんじゃこら……という気分しか残らなかった。

 なんかよく分かんない人たち(描写の薄目な主人公の関係者)が終盤主人公の後ろに増えていって後押しするという展開は、違う意味で面白いが、いよいよヤバい局面に差し掛かると声だけかけて主人公の周りからいなくなるのは、妙なリアルさがあって逆に怖いぞ。

 どうでもいいけど、感想を観てるとなんか作中のSNS含めたネットの描写が中傷などの負の側面を強調しすぎてて、監督の私怨がうんたらとかいう感想があって、片腹(イタイ)。SNSは大体あんなです。もっとカス。てか、監督の実際的な経験が反映されているとして、それをそんなことないよ~私怨じゃないの? みたいな反応こそがまさにSNS的な無自覚系のカスさなのだが。

 それはともかく、作品としてはやりたいことを単発的に詰め込んだバラバラ要素の詰め合わせ感がして、あんまり一つの作品として面白かったり、心を動かされるということはなかった。結構深刻なテーマを扱っている割にはその辺の扱いが映画の味付け以上になっていないような印象は、たぶん不快感を抱かせることにもなっていて、この作品を蛇蝎のごとく嫌う意見にも、一定の理解はなくはない。

 まあ、単純に言えばあんまり面白いものじゃなかった。そういう感想になる。映像はなかなかすごいとは思う。ただ、この映画の根幹にあるガジェット、「U」というセカンドライフ的な仮想空間の描写自体がかなりあいまいというか、携帯のアプリで起動させているらしいのだが、ユーザーはどんなふうにしてその仮想空間を楽しんでいるのかよく分からないのだ。たぶんスマホ越しに自分のアバターを動かしたりしてるんだけど、「サマウォ」からあんまり進化してないそれは、VRが普及してそれを題材にした映画とかもある中で、「人生をやり直せる」ほどの「第二の世界」というものにはとても思えなかった。なんていうか、何がそんなに50億もユーザーがいる楽しさがあるのかとんと伝わってこない。そこもこの映画にとって致命的な問題のように思えた。