蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

アニメ『GAMERA -Rebirth-』

 ガメラ。それはゴジラに並び立つ怪獣の名前。そして、かの破壊神の対としての守護神の名前――というのはまあ、長い時間の中で何となく確立されたようなものであり、ガメラというカメの化物も、ようはゴジラという「際物」の後追いで製作され、シリーズの中で「子どもの味方」という要素を後追い元のゴジラと同じように取り入れながら、結果的に破壊神として生まれたゴジラと対になるような守護神のポジションに収まるようになっていった存在。

 ガメラは昭和期(1965~1980)と平成期(1995~1999)に大きく分けられ、自分が最初に観たガメラは昭和期の『ガメラ対宇宙怪獣バイラス*1で、ダビングしてあったそれを何度か繰り返し見ていたことを覚えている(そんな特に面白いわけではないのだが、子供主人公(日本人と外国人というコンビがなんか新鮮だった)でけっこうテンポよく、幼い自分にとって結構観やすかったのだと思う)ガメラがバイラスの頭で腹を串刺しになり、突かれるたびに甲羅に引っ込んでたガメラの手足が出てくるグロイ描写とか、バイラスの最後の口から汚い泡吹いて死ぬところとか、インパクトがあった。

 とはいえ、ガメラというものが本当の意味で自分にインパクトを与えたのは、平成三部作と言われるシリーズで、これには驚かされたというか、なんとなく“日本の特撮”に対するウンザリ感があった自分にとって(なんて言いつつ、別にそんなたくさん観てるわけじゃないのだが、子ども心にゴジラシリーズがあんまり……という気分だった)、その思いを更新させたという意味でも重要な作品だったと言えるだろう。いまだに、自分はこの平成ガメラ三部作にとらわれているというか、これをはっきりと更新する怪獣映画に出会えていない。

 前置きが長くなったが、『GAMERA -Rebirth-』は、2006年の映画『小さき勇者たち〜ガメラ〜』以降途絶えていたガメラの新作であり、こちらは初の3DCGアニメでネットフリックスでの全6話構成の作品となる。監督はアニメゴジラ瀬下寛之。私は、アニゴジ三部作の第二作目「メカゴジラ・シティ」がかなり好きではあったけど、実のところそこまで期待していたわけではない。また子供が主人公というのも先祖返りで後退してるような印象があった。なんというか、平成ガメラの印象のせいでガメラは特撮の先端を更新するものだという勝手な思い込みがあったわけだ。

 人物のCGとかもあんま好みじゃないな……というイマイチ気乗りしない感じで視聴を始めたわけだったのだが、結果としてはなかなか悪くなく、結構楽しめた。

 内容的には昭和ガメラのテイスト――外国人を含めた子どもたちを主役に、彼らを守護するガメラという要素を中心にして、リファインされたギャオス、ジャイガー、グジラ、ギロン、バイラスといったかつてのライバル怪獣とのバトルが描かれる。あのアニゴジの監督にしては正直だいぶ「ファンに配慮」したような内容になっている。まあ、ファン接待だなんだと批判するのは簡単だが、だいぶ時間が経ってガメラ自体も知らない人も増えたし、かつてウケた部分とか、初めのころのガメラって何だったのかと再定義するは(そこまで必要性は感じないにせよ)、悪くはないのだろう。

 なんだかんだだらだら言ったが、本作の怪獣バトルの描写はかなり良い。リファインされたライバル怪獣はどれも個性があって強力で、バトルの舞台も市街地から深海、人工の浮島や宇宙などといった怪獣ごとに場面を移し、ガメラと死闘を繰り広げる。個人的にはグジラとギロンが好き。ギロンはあの手裏剣もきっちり、より凶悪にリファインされて出てくる。とにかく、ライバル怪獣たちが強いのがいい。バイラスはもうちょい活躍して欲しかったが(作中では最強格っぽいのに。まあ、物語的には「大活躍」してたが)。

 平成ガメラ的な人類との共闘部分もきっちり盛り込んであって、ガメラを援護する自衛隊の戦車隊とか、米軍の航空支援とか様式美と言えばそうだがやはり盛り上がる。

 物語は、古代文明をベースにした結構スケールの大きな話に90年代の少年たちのカルチャーなどを盛り込んだ、ひと夏の冒険ジュブナイルストーリーとなっていて、そのあたりもきっちり手堅くまとめている。前半の巻き込まれ型ストーリーの少年たちから、大きな転換点を経て、ガメラを守り、そしてガメラとともに戦おうとする少年たちの成長を無理なく描けていたと思うし、正直、最初はあんまり好きな感じがしなかった主人公のボコことヒロキも終わるころには主人公として見れていた。あと、ヒロキの親友ジョーことサトルがいいやつすぎる。

 まあ、キャラクターでいえば、やはり早見沙織演じるエミコお姉さんですよ! この早見沙織ボイスの、少年たちのいいお姉さんみたいなキャラクターが物語のいいアクセントになっていて、個人的にはエミコお姉さんがMVPでしたね。

 しかし、ラストのあれとあれは正直蛇足というか、タザキのあれはマジでいらねえ……最後のやつはジュブナイルらしい救いと新たな冒険の可能性みたいなものにはなっているけど、やっぱりいらなかったんじゃないのかなあ。

 それはともかく、概ね楽しめたし、WANIMAが歌うOPの『夏暁』とEDの『FLY & DIVE』が良くてけっこう今も聴いてる。

 


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 だんだん癖になってきたOP。最後まで観ると、全話の要素がちりばめられていることがわかる。どうでもいいが、登場人物たちが背中を見せながら立ち上がるシーンがめちゃ好きだ。


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*1:バイラス星人というイカみたいな宇宙人が合体して宇宙怪獣バイラスになる。まあ、バルタン星人みたいなやつ