蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2025-01-01から1年間の記事一覧

映画『ChaO』(2025)

あらすじ 船舶会社に勤める平凡な会社員、ステファンはある夢を抱きながらも、それを実現する機会を持てないまま、社長にどやされながら意にそわない仕事をこなしていた。そんなある日、急に人魚の姫だという魚、チャオから求婚されてしまう。突然のことに戸…

それは一つの風景:映画『秒速五センチメートル』

なんか久しぶりに観ようかな、と思い立って観たので感想を書いた。 『秒速五センチメートル』といえば、今は宮崎駿に続く「国民的」なアニメ作家としての地位を確立しつつある新海誠による第三作。全体が三つの章立てになっていて、「桜花抄」、「コスモナウ…

立ち上がる光:『スーパーマン』

観た時から、だいぶ時間が経ってしまい、なんだか記憶も薄れてて今さらな感じがしてしまうが、とりあえず感想を残しておこうという気分で押し通したものとなっている。 スーパーマンか……という気分ではあった。 スーパーマンといえば、アメリカのコミック史…

気持ち悪さの輪郭:映画『アングスト/不安』

(スチル写真怖いよ……) 例によってというか、元ツイッタのフォロワー青さんのブログで見かけて、なんかヨーロッパで上映禁止になった曰くつきの作品という紹介と、映像がカッコいいという評に惹かれて観ました。青さん、とりあえず映画との出会いをありがと…

なかなか挑戦的で異色な作品:アガサ・クリスティー『三幕の殺人』

あらすじ 元俳優、チャールズ・カートライトのパーティーにて、招かれた牧師が急死する事件が起こる。その時は事件性はないものとされたが、その後、再び開かれた別のパーティーで今度は医師が死亡。同様の状況で起きたそれは毒殺と判断され、同時に牧師の死…

チラ見せの技術:アガサ・クリスティー『エッジウェア卿の死』

あらすじ 奔放な舞台女優、ジェーン・ウィルキンソン――たまたま居合わせたホテルでポワロの姿を認めた彼女がしてきた依頼、それは夫とどうしても別れたいのだが、彼がそれに応じてくれいないというものだった。そんな彼女の夫であるエッジウェア卿を説得する…

言葉が、人を動かさないとしても:藤つかさ『名探偵たちがさよならを告げても』

高校教諭にして作家だった久宝寺肇が癌で死に、その遺稿を彼の教え子である辻怜人が発見した時、すでに事件は引き返せない場所に来ていた。 久宝寺の遺稿には探偵と被害者、そして簡単な事件のあらまし、さらには妙な言葉選びでの読者への挑戦があっただけで…

入院じゃなくてよかった

タイトル通りの話 3年ぐらい前に見つかった腫瘍を経過観察で毎年やり過ごしていたのだが、今年の三月に入って、やっぱ詳しく診た方が良いんじゃない、みたいなことになって大学病院へ回され、すぐ手術しましょうみたいな感じで日程が決まってしまった。しか…

久住四季『神様の次くらいに』

『トリックスターズ』や『星読島に星は流れた』の著者による初の〈日常の謎〉短編集。それぞれの短編は独立していて、登場人物などの繋がりはないが、過去作の登場人物などが主役を務めたりしている。また、明確なテーマというわけではないが、事件が起きる”…

回文めぐるサーカスの事件:泡坂妻夫『喜劇奇悲劇』

あらすじ 落ちぶれ、アルコールに溺れる日々を過ごす奇術師、楓七郎。そんな彼に昔馴染みからステージに立つよう、依頼が舞い込む。ショウボート――動く娯楽場たる船――その中で行われる予定の興行で、奇術師がひとり必要になったのだ。船の名前はウコン号。そ…

三番館シリーズ 第二集 鮎川哲也『マーキュリーの靴』

三番館シリーズ第二集。きっちり固めたパターンの第一集から、ミステリの内容や構成含めて、そこからの変化を試み始めている。謎については、これまでのアリバイ崩しから、分身の謎、宝石盗難、ダイイングメッセージ、雪の密室、そしてストレートな密室とい…

三番館シリーズ 第一集 鮎川哲也『竜王氏の不吉な旅』

Introduction 鮎川哲也の名探偵と言えば鬼貫警部と星影龍三の二枚看板が有名だが、もう一人、短編でのみ活躍した名探偵がいる。それが、「三番館のバーテン」である。通称三番館シリーズと言われる作品群は、私立探偵である“わたし”を語り手に進んでいく。事…

横溝正史『死仮面』[オリジナル版]

ついに読みました、『死仮面』。 この作品は金田一シリーズの第四作にあたり、戦後の再始動した横溝作品としては、かなり最初期にあたる作品となっています。しかし、一般的な知名度で言うと、それ以前の『本陣殺人事件』『獄門島』『夜歩く』『八つ墓村』な…

名探偵の使い方:アガサ・クリスティー『邪悪の家』

あらすじ 保養地のホテルでポワロはヘイスティングズとともに、一人の女性と知り合う。近くに建つエンド・ハウスの持ち主である彼女――ニック・バックリーはポワロに最近三回も命拾いをしたと話す。そしてその会話中に、彼女の帽子を銃弾が貫通するというさら…

なんともハッピーなカーニバル:映画『黒猫・白猫』

あらすじ 舞台はユーゴスラヴィアの田舎町。やたらうまい話に乗っかろうとしては失敗する男マトゥコは、マフィアのダダンに貨物列車襲撃の計画を持ち掛ける。が、それもあえなく失敗。さらなる借金を背負ったマトゥコは、借金帳消しのためダダンから息子のザ…

カーター・ディクスン『白い僧院の殺人』

あらすじ ロンドン近郊にある、由緒ある屋敷「白い僧院」でハリウッドの人気女優マーシャ・テイトが殺されたスキャンダラスな事件は、その発見時の奇妙な状況から、さらなる混乱を関係者たちに与えた。彼女が泊まっていた離れは、周囲百フィートにわたって雪…

そのエゴは怖いよ:映画『メイク ア ガール』

Impression なんかとんでもない映画だった。 この映画の脚本・監督を担当している安田現象というと、元twitterとかやってると、時おりタイムラインに、その作品が流れてくることがあるかもしれない。若い人たちを中心に人気のアニメーターで、セルルックな3…

逢緑奇演『こちら、終末停滞委員会』 四季大雅『クラスで浮いてる宇良々川さん』 真代屋秀晃『ウザ絡みギャルの居候が俺の部屋から出ていかない』1&2巻

最近、そこそこラノベを読んだので感想を短く書いておこうかと。 逢緑奇演『こちら、終末停滞委員会』 いきなりマフィアに殺されかけている主人公というところから、アンチ異世界転生的な展開を経て、終末が確実な世界を可能な限り停滞させる戦いに身を投じ…

機動戦士Gundam GQuuuuuuX観てきた。 ※ネタバレ前提なので、そのつもりで読んで どうしようかなあぁ~、とだいぶ迷った感はあったが、観に行く人が近くにいたので、一緒に行くかぁ……という感じでついて行ってしまった。 正直なところ、自分はもうカラーには…

映画『独裁者』

1940年公開 監督:チャールズ・チャップリン チャップリンの代表作の一つで、彼の初の映画全編にわたる完全トーキー。久しぶりに観返してみた。最初観た当時、最後の演説を暗記しようとして挫折した記憶も懐かしい。そして改めて観て、当時よりももっと身近…

カーター・ディクスン『爬虫類館の殺人』[訳]中村能三

巳年だし、新訳も出るみたいだしで、再読してみました。まあ、トリック以外はほとんど初読みみたいな感じだったので、わりと新鮮な気分で楽しめました。そもそもこの作品、カーのトリックの中でも有名な方で、トリックバレ本みたいなやつで先に知ってしまっ…

映画『殺しを呼ぶ卵』

1968年公開 監督:ジュリオ・クエスティ 青さんのブログ「偽物の映画館」でレビューされてて、インパクトのすごいビジュアルデザインにも惹かれて観てみた。 監督のジュリオ・クエスティは残虐描写で有名なマカロニウエスタン『情け無用のジャンゴ』で知られ…

映画『1987、ある闘いの真実』

2017年公開 監督: チャン・ジュナン 今年の一発目はこの映画になりました。まあ、タイムリーなこともあるというか、去年観た『ソウルの春』とかで、韓国の民主化運動にちょっと興味わいたこともあり、観てみました。 あらすじ 救急車が荒い運転で街を走り抜…

P・ジェリ・クラーク『精霊を統べる者』

年末から読み始めて、何とか読み終わった。これが今年初めての読了本ということになる。 あらすじ 19世紀後半、後に伝説となる魔術師アル=ジャーヒズがジン〈精霊〉の世界との扉を開き、世界は魔法とジン、そしてそれらと融合する科学によって一変した。そ…

去年クリアしたゲームの話でも

最近、やっては途中でやめて積むばかりだったゲームを、何とかクリアまで行きつけるものが出てきて、去年は自分としてはなかなかのゲームイヤーとなった気がする。PS5もついに買ってしまったし(まだセッティングしかしてないが)。 クリアしたソフトは『ラ…