蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧

チラ見せの技術:アガサ・クリスティー『エッジウェア卿の死』

あらすじ 奔放な舞台女優、ジェーン・ウィルキンソン――たまたま居合わせたホテルでポワロの姿を認めた彼女がしてきた依頼、それは夫とどうしても別れたいのだが、彼がそれに応じてくれいないというものだった。そんな彼女の夫であるエッジウェア卿を説得する…

言葉が、人を動かさないとしても:藤つかさ『名探偵たちがさよならを告げても』

高校教諭にして作家だった久宝寺肇が癌で死に、その遺稿を彼の教え子である辻怜人が発見した時、すでに事件は引き返せない場所に来ていた。 久宝寺の遺稿には探偵と被害者、そして簡単な事件のあらまし、さらには妙な言葉選びでの読者への挑戦があっただけで…

入院じゃなくてよかった

タイトル通りの話 3年ぐらい前に見つかった腫瘍を経過観察で毎年やり過ごしていたのだが、今年の三月に入って、やっぱ詳しく診た方が良いんじゃない、みたいなことになって大学病院へ回され、すぐ手術しましょうみたいな感じで日程が決まってしまった。しか…

久住四季『神様の次くらいに』

『トリックスターズ』や『星読島に星は流れた』の著者による初の〈日常の謎〉短編集。それぞれの短編は独立していて、登場人物などの繋がりはないが、過去作の登場人物などが主役を務めたりしている。また、明確なテーマというわけではないが、事件が起きる”…

回文めぐるサーカスの事件:泡坂妻夫『喜劇奇悲劇』

あらすじ 落ちぶれ、アルコールに溺れる日々を過ごす奇術師、楓七郎。そんな彼に昔馴染みからステージに立つよう、依頼が舞い込む。ショウボート――動く娯楽場たる船――その中で行われる予定の興行で、奇術師がひとり必要になったのだ。船の名前はウコン号。そ…

三番館シリーズ 第二集 鮎川哲也『マーキュリーの靴』

三番館シリーズ第二集。きっちり固めたパターンの第一集から、ミステリの内容や構成含めて、そこからの変化を試み始めている。謎については、これまでのアリバイ崩しから、分身の謎、宝石盗難、ダイイングメッセージ、雪の密室、そしてストレートな密室とい…