蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

飛鳥部勝則『抹殺ゴスゴッズ』

 

抹殺ゴスゴッズ

 以前足を運んだ講演会で、著者が予告していた作品の一つ。

 その時のことを書いた記事。うろ覚えで抹殺が「~殺」とあいまい

kamiyamautou.hatenablog.com

 当時刊行予定を聞いて約一年近くになるが、著者の長編としては実に十五年ぶりとなる新作。そして、本作は飛鳥部勝則再始動にふさわしい作品となっていたと思う。

 作品のタイプとしては『堕天使拷問刑』に近い。高校生の少年が、どこか奇妙な女の子との交流をしていきながら、エログロな事件に巻き込まれていき、やがて大きなカタストロフ、そして謎解きの末、なんだか知らないが綺麗なロマンスで纏まるという形で、なんだか奇妙というか、うまい具合丸め込まれたような独特の読み味。

 今作の場合、主人公の父を語り手にした平成編、そして現在の令和編という二つの時代を交互に行き来しながら、最終的に令和の事件にすべてが収束する、という構成を取っている。平成編には怪人、令和編には怪神という存在が事件の中心で跳梁し、前者は横溝風の本格ミステリ、後者は唐突な暴力とエログロで彩られる青春物語という感じ。

 語り手はどこか低体温な感じがするのに、その周りで起きていることは妙に異様で熱を帯びたものとなっていく。そのアンバランスな物語の手触りも著者ならではのものがある。

 それにしても、野放図に展開されているように見えた事件が意外ときれいにミステリとして収まって、そのへんの変格ミステリ的なテイストと本格ミステリの融合具合は飛鳥部本格を読んでるという愉しみがあったし、ほんとに久々に飛鳥部勝則の新作を読めて良かったという実感がしみじみ湧いてきたのだった。

 まあ、横溝風の本格パートのトリックはちょっとおとなしい感じというか、シンプル過ぎな感じはしなくもなかったけど、嫌いじゃない。まあ、横溝の某代表作からの引用的なものっぽいけど。そういうの含めて横溝テイストな方向ではある。

 あとこの横溝風パート、横溝作品でよくある衝撃を受けた時の表現「脳天に杭を打ち込まれたような~」をしばしば引用するのだが、実際に被害者の殺害方法が鏨を脳天にぶち込まれるというギャグだか何だか分からないが残虐なやり方はなかなかインパクトがある。ちゃんと洞窟も出てくるし、平成とか言ってるけど、なんだか昭和ライクな雰囲気が漂うパートだ。

 とにかく、飛鳥部勝則の復活を告げる作品として、読者が望んでいるようなタイプの作品をしっかり出してきて、続く館物と予告されている作品も楽しみだし、そして今後またどんな異形の作品が出てくるのか、唯一無二の作品の出現を期待したい。

 それから、短編集も出して。