蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

久青玩具堂『奇想怪談×天外推理』

奇想怪談×天外推理 今日も彼女と”溜息”のオカルト研究会 (MPエンタテイメント)

 

あらすじ

 高校一年生、水井境太郎は友人高野聖から、ふった元恋人が自分を呪っているらしいという話を聞かされる。その元恋人は別れてからオカルト研究会に所属し、しかもそこの部長はなにやら”呪われている”らしい。高野の元恋人がどの程度本気なのかを探る、そのつもりでオカ研の門をたたいた水井だったが、そこで部長である宇津機理世の”フィールドワーク”につき合わされることに。宇津機は、ホンモノのオカルトを求め、学校のネット掲示板に投稿される怪奇な話を実際に調査することを旨としていた。体験入部のような形で、彼女の”フィールドワーク”につき合ううち、境太郎は宇津機理世という”呪いを背負った”先輩への興味を深めていくのだった。

 

感想

 本作は、学校のネット掲示板に投稿された怪談を実際に調査し、その怪談の真実を推理で解体していく、という流れになっている。怪談パートはけっこう長めの物語として書かれているので、怪談パートと調査推理パートで二部構成な作り。先輩である宇津機そのものにまつわる怪奇(というか不幸体質)はあれど、それぞれの怪談はきっちりと現実的な着地を見せ、三津田信三みたいな、それでも怪異が、というタイプではなく、ミステリとしてきっちり落とす作品となっている。キャラクター小説的な魅力もあり、不幸体質でオカルトオタク気質な部長の宇津機がなかなかいいキャラをしている。水井が様子をうかがう友人の元カノ、加賀見清花もなかなかいわくありげなキャラで異彩を放っているが、メインが宇津機先輩に移っていくので、彼女の真意自体は次に持ち越し――みたいな感じではある。

 

「第一話 天狗 隠しの怪―Invisible Ladder」

 天狗を奉る里で、投稿者の兄遭遇した神隠しの顛末を調査するという宇津機と加賀見の調査について行くことになった水井。事件後に投稿者の兄が書いたノートを基に、宇津機は神隠しの真実を明らかにしていく。テキストを基にした推理は、謎解き自体の派手さはないが、堅実な感じ。謎解きを通じ、投稿者の兄の姿が浮き上がり、”神隠し”によって、何が隠れていたのか、というのが見どころか。

「第二話 羅切丸の怪―Ripper RIP」

 当主の下半身の一物を切り取り続けたという、なんともな曰くが残る刀、という話から、なかなか重たい真実が現れる。浮気に寛容だった奥方の豹変や血のつながりがないはずなのになんか似ている当主たち、という謎がなかなか巧い。

 どうでもいいけど(いやよくないんだけど)、この話の冒頭に置かれたエピグラフだが、タイトルを「九尾の狐」と新訳なのに訳者を大庭忠男と盛大に間違っていて、なんか仕掛けがあるのかと思ったほどだった。

「第三話 両喜亭の怪―THE CURIOSITY HOUSE OF RYOKITEI」

 心身に変調をきたした豪商のつくったとされる奇怪な屋敷。でたらめな間取り、用を成さない座敷牢などが設計され、両喜亭と呼ばれたそこでは、完成後不可解な怪事が頻発する。そして、ついには屋敷を造った当主の失踪といういわくつきの怪談、その調査を生徒会長から依頼され、廃村に残された屋敷に向かうオカ研。

 二笑亭をモデルにしたと思しき奇怪な建物での怪は、説明されたもの以上の感興はそこまでないのだが、何故そのような屋敷を造ったのか、という動機の部分がなかなか良くできている。周到に伏線も張ってあり、奇怪な屋敷の裏にある人間の姿を浮かび上がらせる好編。

 以上、めちゃめちゃ本格という感じではないかもだが、なかなか読んでて楽しい作品に仕上がっている。なにより、キャラクターがいい感じだった。宇津機先輩が後半になるにつれ、見守りたいキャラみたいになってるのはちょっと好きじゃないにせよ、語り手の水井含め、彼らの今後の活躍に期待というか。ヘンに深刻な”青春”を意識することなく、割とフラットに人物周りの体裁が整えられているのが好みだったのかな、とも思ったりした。