蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

 ミステリ作家によるトークショーなるものに初めて行った。

 そもそも、私の住む場所にミステリ作家が来て話をするという機会自体がほとんどなかったような気がする(もしかして初めてなんじゃないかな)。そんなわけで、ミステリ作家を生で見るとか、話を聞くとか、本当に初めての体験でした。

 トークショーのテーマは変格ミステリについてで、竹本健治井上雅彦飛鳥部勝則の三氏それぞれの変格に対する思いが聴けて良かったです。全員、ヘンなものが見たいというのが共通していて、それは、私が小説を読む動機みたいなものでもあるので(とはいえ、私はヘンだから無条件で喜ぶタイプではないけど)、まあ、ある種定型化して、先鋭化した本格とは別のミステリの魅力を開く、変格という存在も大きくなって欲しいところではあります。そういう意味でも、飛鳥部勝則氏が提唱していた「変格ミステリ・マスターズ」という叢書はぜひ実現して欲しい。ただ、とにかく色んな作家に変格を書いてもらう場をつくれたらいいとは思う一方、どんどん苦しくなる出版事情のなかでどんなふうに実現できるか……というところは考えどころかもしれません。現代作家の変格ミステリ短編を編むという、魅力的な企画も、竹本氏が編んでいる「変格ミステリ傑作選」の最後に出す構想はあるらしいのですが、このままだとフェードアウトしそう、ということでした。だからまあ、やはり「元Twitter」とかでどんどんファン同士の盛り上がりをつくる必要があるのかな……とも。飛鳥部勝則氏の本の復刊の流れもそういう「元Twitter」でのバズとかあるわけですし、個人的にはそういうの苦手なんですが、なんだかんだで、ファンの内輪の盛り上げというのは大事かもなあ、と。とにかく、これだけの人が望んでいるんだ、というものを可視化するということ。

 あと、飛鳥部氏のミステリの書き方について、図像学を用いたミステリについては、絵が先にあって、それを他者から見たらどう見えるのか、という視点から物語をつくっていくということで、物語に合わせた絵を用意しているわけではなく、絵から物語を立ち上げるという話は、そうなんだ、という証言でした。

 それから、なにより嬉しい驚きだったのが、飛鳥部勝則氏の新作として二作(本当は三作らしいのですが、三作目の話はまたどこかで、ということでした)のちょっと詳しい話が出たことです。一作はゴシック三部作に連なる四作目で、「○殺の~」(ナントカ殺だったと思うのですが、メモ取ってなかったので失念)でモチーフを基にした作品。もう一つは「~の館」という館ものだそうで、トリックから考えた新本格、ということでした。いつ出るかは分からないにせよ、飛鳥部氏が新作に向けて意欲的に語っていて、すごく嬉しくなりましたし、もちろんぜひ読みたいな、と。

 そんなわけで、初めてのミステリトークショーでしたが、行ってよかったです。次もこういうイベントがあったらぜひ行きたいですね。