蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

 一昨日あたりから喉の調子が悪く、腫れあがっているのがわかる。熱がないのは救いだが、喉に意識が行って、微妙に読書がはかどらない気分。

 色々併読してて、全然読み切らない本が増えているせいもあるかもしれない。

 今回は最近見た映画や読んでる本など、ブログ記事にまとまりきらないものの断片みたいな感じで書いている。

 

学問のすすめ』を現代語訳で読んでいるのだが、個人としての独立を促したり、国民の無知無学は「おまかせ政治」を招き、やがて専制政治を招くといった、いわゆるリベラル的な思想と、“祖国防衛の気概”という感じで、国のために命なげうつ覚悟をせよ、みたいな戦前戦中の「動員」を支えるような文章が混交している印象を受ける。

 福沢としては、前者を前提としたうえで外国からの独立を守れと言っているわけだが、色々都合よく切り取られてきたんだろうなということは、想像に難くない。理論的に全体を俯瞰するのは人間は苦手だ。僕も読みかけをちょこちょこ切り出してなんか言っているに過ぎないわけで、こういう読みかけの印象という奴は早々に切り上げて、とりあえずしっかり読了して全体を把握したい。現代語訳なのでかなり読みやすいしね。

 あとはバスターキートンの『大列車追跡』を観た。バスターキートンはそんなに観てないし、まあ、やはりチャップリンの方が好きだったりはするのだが、彼の徹底して無表情のままで繰り出される体を張ったアクションやコメディはなんかクセになるものがある。本作は公開当時はあんまりヒットしなかったらしいのだが、後世の映画人やファンからは評価されている。オーソン・ウェルズなんかべた褒めしているらしい(ウィキ調べ)。最高の映画っていうのは大げさすぎる気はするが、当時の、俳優がとにかく体を張ってる感のアクションはすごいというか、なんか別の意味で手に汗握る感があって今とは違う味わいがある。あと、どうでもいいが、主人公が南軍の兵士を志願してて、南軍視点的な映画って当時としてはどういう感じだったんだろうか。こけた理由ってその辺にあったりしないの? みたいな気がしたりしたが、公開当時で南北戦争から六十年経ってるし特に関係なかったのかもしれない。しかし、誇らしく職業は軍人ですと答える牧歌的なラストシーンとか、南北戦争で何人死んだかを考えるとなんかグロテスクな感じはちょっとする。

 それから、ちょくちょく昔のアニメを観ているというか、ルパン三世のファーストシーズンを観直したりしている。この作品、路線変更で大きく二つに分かれていて、かなり大雑把に言うと九話あたりまでは原作漫画の雰囲気を再現しようとしているハードボイルドな作風で、以降は高畑・宮崎組の手に渡って、コミカルな色合いが強くなる。ハードボイルド路線は確かに渋くて今のルパンから失われたものが詰まってはいるのだろうけど、若干退屈なところはあって、はやり高畑・宮崎の手が入った後半部がエンタメ的には面白くはある。とはいえ、『十三代五ヱ門登場』『狼は狼を呼ぶ』なんかは画面構成とかかっこいいシーンが多く、『十三代五ヱ門登場』の高速道路のシーンとか『狼は狼を呼ぶ』の海鳥の下の五ヱ門のところとか、今観ても恐ろしくかっこいい。海鳥のところはなんか、出崎統っぽい演出だと思ったら、出崎統が関わっていたらしい。

 このころのアニメは今と比べて絶対的に動いてはいないんだけど、それでもすごく生き生きとしている感触はある。てか、アニメってもともと、どうしてもフルアニメーションみたいにできないからこそ、生まれた表現のような気がするし、めちゃくちゃ動いている(しかもきれいに)というのが、絶対的な評価軸みたいになってしまった今現在のファンの要求というものが、なんかもう気詰まりで仕方がなく思う時がしばしばある。特にこんな昔の見事なアニメを観ているときに。

 スタイルが固まるまでの試行錯誤期にしかない面白みもたくさん詰まっていて、定期的に観返すと、なんかいいなあと思う作品だ。