蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

ウマ娘 プリティーダービー Season 3 第一話『憧れた景色』感想

 ウマ娘のアニメ。その第三期。あの第一印象ヘンなアニメがここまで続くようになるとは、となかなかの感慨がありますね。

 第一期の楽しく、かつアイドルテイストなスポーツものとして、独自の世界を構築し、それをステップボードに、よりモデル馬の事実を忠実になぞる形でシリアスな(でもギャグも忘れない)栄光と挫折、そして再起の物語を描いてきたウマ娘のアニメですが、第三期はまたどんな物語が描かれるのか、非常に楽しみな感じでその放送を待っていたのでした。

 第一期のスペシャルウィーク、第二期のトウカイテイオー、そして今回の第三期はキタサンブラックが主人公というわけですが、私はもともと競馬に詳しくはないですし、ウマ娘のアニメ観たりゲームしてからも、特にそこまでモデル馬たちの戦績やエピソードとかを調べたりしてるわけではないので、そういう人間としての感想をつづっていくことになります。

 まあ、いろんなところで情報が入ってきたりするので、まったくのまっさらなんてことはなくて、うすぼんやりに把握しつつではあるのですが。

 それはともかく、第一話の感想ですが、やはり及川監督は上手いですね。競馬エピソードネタやモデル馬ネタをそつなく織り込み、二期以前と違って、もはや確固として存在するアプリゲームの宿命的なキャラ見せも背景で適度(適当)に処理し、競馬ファン向け&SNS向けなサプライズを繰り出しつつも、ちゃんとキタサンブラックを主人公とした第一話に仕上げる職人技な第一話でした。

 まず恒例のたづなさん(cv藤井ゆきよ)によるナレーション。今回のナレーションがかぶせる映像はモアイ……最初から及川節の炸裂というか、だんだんネタ化が著しいのもシリーズ化の感慨を抱かせます。実のところ、ウマ娘異世界転生的なものであるということを物語絵巻風に描かれた第一期のタペストリーみたいなやつを毎回挿入してもいい気はするのですが、作品ごとに違った形になっていくのもそれはそれで楽しみの一つになっていますね。

 それはともかく、開始直後はレースから。皐月賞、つまりクラシックの三冠のはじめから物語は始まります。ここまで無敗できたキタサンブラックですが、レース終盤に後ろからものすごいスパートをかけてきたドゥラメンテに敗北。今回は主人公いきなりの敗北で幕を開けます。まあ、一期のスぺちゃんも模擬レースで負けてはいましたが。先行してYouTubeで配信されたROAD TO THE TOP(RTTT)の主役、ナリタトップロード皐月賞の敗北から始まるので、主人公の敗北で始まるのは初めてというわけではないのですが、三期のキタサンブラックは場合は二期のトウカイテイオーと対になるような構造になっています。

 皐月賞、ダービーを勝ったトウカイテイオーに対し、どちらも勝てず、しかもダービーは十四着に終わってしまうキタサンブラック。ただ、逆の形で敗北したというだけでなく、テイオーをキタサンの小さいときからの憧れとして設定することで、憧れの人にまったく届かないというドラマが生まれるのが、競走馬を擬人化したウマ娘の醍醐味でしょう。憧れの人のダービーでぼろ負けしてしまい、しかも皐月賞、ダービーと勝ったのが、その憧れの人のように走るウマ娘だったという作りが上手いです。そしてその勝者であるドゥラメンテの強さを印象深く視聴者に刻み付けるレース描写もかなり良かったですね。黒っぽいオーラを纏いながら突っ込んでくるのを、直線的なカメラの動きでとらえるスピード感が素晴らしい。なんか、アニメ前は競馬ファンからはウマ娘化が困難な所有者の馬であるドゥラメンテが出てくるかが争点になってたりしてましたが、個人的にはその辺よく知らないので、その馬が出ることが驚きみたいなのは特にないし、別に似たような名前で出てきても、きっちり物語の役割としてめちゃくちゃ印象に残る登場人物になっていたと思うし、そこが本当のところは大事なはずなんですね。

 二期のテイオーはある意味頂点から始まったわけですが、一方のキタサンはいきなりどん底から始まるという第三期。なかなかまた違った形の物語になっていきそうで第二話も楽しみです。そして、RTTTに続き、またもや影も形もなくなったライブが、どこでどんなふうに演出されるのかも結構楽しみにしています。

 大雑把な構造はこんな感じですが、物語周りの監督らしいシュールなギャグなんかもいつものウマ娘な世界を作り出すのに貢献していて、やっぱりこの世界が自分は好きだなあ、と再認識させられました。なんていうか、そもそもが競走馬を美少女化して競馬場を走らせるなんて、シュールすぎる光景なわけですし、彼女たちを取り巻く“異世界”もやはりシュールな空間としてギャグ演出されてた方が自分としては、その世界に浸りやすい気はしています。その辺、RTTTは自分にとっては生真面目すぎて逆に作品世界からはじかれる時があったかな、みたいな気がしています。

 あと、モブというか、商店街の人たちもただ出すというよりは、キタサンのお助けキャラ的な性質のエピソードをちょっと組み込んで関係性の根拠をつくってたりとか、細かいところですが、その辺けっこう大事なところをそつなくやってるな、という印象でした。

 最後に、音楽の使い方もなかなか上手かったように思います。レース中にドゥラメンテが出てくる時の、これまでとは違った新しい強敵のテーマとその入れ方とか、いままでのなじみの音楽と新しい楽曲の使い方とか、またその辺も注目しながら観ていきたいですね。主人公から先輩になったテイオーをはじめとしたチームスピカの活躍とか、カノープスの面々は今回は役割があるのかないのかとか、いろいろ楽しみにしています。

 とりあえず、やっぱりアニメウマ娘、好きなんだなあ。

 

一話予告


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二話予告


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