またちょっと溜まっていたシンデレラグレイの7話から10話までのあらすじを含んだ感想を。
第7R「ジュニアクラウン」
次にオグリが挑むのは準重賞レースである「ジュニアクラウン」。そしてそこには再びフジマサマーチの姿が。二度目の激突は、前回の雪辱となるのか。そして、そのレース会場の近くには、やがてオグリの前に立ちはだかる最大の宿敵ウマ娘が――。
一応、ベルノライトさんの初レースという回でもあるのですが、それはアニメ・ウマ娘の京都新聞杯におけるスぺちゃんと同じ出オチの敗北。落ち込むベルノに無自覚に速くてごめん……とかいっちゃうオグリさんマジで鬼畜です。
だんだんとオグリさんに人間味というか、作画担当の方が意図して描いていた形で、少しづつランニングマシーンのような表情から意志のようなものがにじみ出てきていて、今回はフジマサマーチに対し、かつて言われた言葉を返して「貴様には負けん」と不敵に勝利宣言。そんなオグリの言葉に少し驚いたような後、口の端を吊り上げるマーチ。そのわずかに笑みを浮かべる口元を写すコマは、とてもいい演出ですね。少年漫画だ。オグリさんがマーチを指さす時のそのちょっと不敵な表情も良いです。
そして、北原の夢である東海ダービーに目標を重ねるオグリ。私もそこを目指すよ、と。トレーナーとウマ娘の目指すべき場所を設定する回であるとともに、新たなキャラクター――タマモクロスとともに、北原トレーナーの伯父であり中央のトレーナーという人物が登場し、にわかに「中央」という場所がにおってくる、そんな回でもありました。
第8R「想定外」
いよいよ始まるジュニアクラウン。高みの見物をするタマモクロスの視線のもと、オグリとマーチ、芦毛の両者が激突する。
この、芦毛の三すくみみたいなのが良いですね。現在と未来のライバルたち。しかし、マーチさんのストイックぶりが強調されるほど、事実を確認するとツライところがあります。擬人化して人格が描かれるほど残酷な存在になっていくというか。中央へ行くとしたら思いっきりオグリの影になりそうで怖い。ウマ娘のIFとして、何らかの希望というか安寧のようなものがあるといいですね……。まあ、モデル馬は高知に移ってからけっこう勝っていたりはするみたいですが。
同時にスパートをかけるという、マーチにとって想定外の事態。しかし、オグリはマーチとのその前の差を埋めることができない。このまま順位が確定するのか――? という所で次回に続く。
第9R「二度目」
マーチとオグリ、二度目の激突ははたしてどちらの勝利で終わるのか。
マーチさんの回想から入りますが、その一ページと次の彼女の背中で彼女の背負ってきたものが分かる。物語をダラダラ重ねるのではなく、とても簡潔で的確な構成で分からせてきます。
そして、初めて出現したライバルが自分を更なる高みへと押し上げるという狂喜でそまる表情――だが、そんなマーチの思いをひねりつぶすようなオグリの魔物性が覚醒します。どっちもすごい表情だし、オグリさんは完全に殺しに来てます。牡馬のウマソウルが宿ってますねこれは。
完全予想外の二度目のスパートを行い、一着でゴールしたのはオグリキャップ。驚愕する周囲と愕然とするマーチトウショウ。何故二度もスパートをかけることができたと掴みかからんばかりの彼女に、オグリは「多分マーチのおかげだ」と返す。
走れるから走る、そんな風に走っていた彼女にはじめて宿った「負けたくない」という気持ち。それが彼女をより強くさせた。「一緒に東海ダービーで走ろう」、そういって伸ばすオグリの手を「今度は負けん」と握るマーチ。二人の手のアップのコマは彼女らのライバルである最高の瞬間を切り取っていて、それを見下ろしているのがタマモというのがまた何とも言えない。というか、事実において彼女たちの言葉が、どちらも実現しないということが何だか切ない。まあ、ウマ娘の彼女たちの運命はまだ分からないわけではありますが。
レース後伯父で中央でトレーナーをしている六平から、次はどこに出すつもりなんだと問われる北原は、中京盃と答えるが、六平はそれはやめておけと言って去っていく。いぶかしむ北原。ジュニアクラウンの次は中京盃当然の流れだし、それがオグリのためだ。それが、北原の夢を遠ざけることを彼はまだ知らない。そして、オグリキャップという存在の真価も。
今回もまたキャラクターの表情がすごい。特にオグリさんの鬼気迫る表情からの笑顔のギャップやその後のライブでのまだぎこちない表情など、少しづつ色んな表情が出てきてそこも注目ですね。ライブの中でノルンエース以下の不良風ウマ娘たちが前列でオグリに踊りの指導やボードで助言してる風景も、関係性の変化を少ないコマですが描いていて本当に無駄がない。
あと、肩や背中が出てる衣装を着てるのですが、がっちりアスリート体型で描かれてて、美少女とアスリート性ががっぷり四つに組んだアイドルとか、アイドル地獄変みたいじゃん(?)、という気がしてなかなか良いです。新たな癖を読者に刻んでくるぜ。
第10R「国内最高水準」
まず扉絵ですよ。なんというカッコいい後ろ姿か。シンボリルドルフ、マルゼンスキー、ミスターシービー。最強のウマ娘たちの背中が無言の圧をかけてきます。ていうか、なに、ルドルフカッコよすぎないか。内容入ってこない。カイチョーカッコイイ!のトウカイテイオー(CV:Machiko)で終了です、ハイ。
……いや、まあ、とにかく今回はテイオーも必見の会長回です。
北原の通用してくれ……みたいな思いとは裏腹に、中京盃を圧勝するオグリ。7話のベルノとは対照的に二コマで速攻勝利のスピード感が、その歴然たる強さを演出してます。国内最高水準の強さ。当然「中央」からの誘いがくる。それを北原は見抜けなかった。だからこそ彼は、二人で設定した夢をあきらめざるを得なくなる、事実を基にしたそんな皮肉な展開の構成がなかなかです。G1レースも行われる場所で、そのような走りを見せつければ、当然、「中央」の目に留まる。北原が思っている以上に巨大な存在だったウマ娘――怪物がその一歩を衆目に刻み、彼との別れを予感させる回でした。
とはいえ、ウマ娘の場合、当然のことながら人格がるわけで、これからオグリとしてはどう思い、どういった選択を取るのか。IFはあるのか、あるとしたらどういうものか、そこもまた注目ですね。
それにしても会長の「ほう……」とか絶対勝負したがってる顔だよ。そして負ける気さらさらない顔だよ。元馬たちの縁というか、タイミングとしては、ルドルフの引退後にニアミスするような形でオグリは台頭してくるので、直接の関係はないのですが、彼女からのスカウトは、王が後継者を迎えに来ているようにも見えますね。というか、「シンデレラ」的には王子なのか……いやさすがに違うか。「ウマ娘」ファンとしては前世(最初期の変なPV:二人でスケートをするぞ!)からの縁を感じるぜ……。
その他としては、オグリの「観てて」という言葉と表情。ベルノのギャグ顔とのギャップが効いててよいコマ。あとなんといっても、レース直前の足です。完全に馬を意識したような足が素晴らしい。黒のストッキングといい、元馬の魂とリスペクトを感じさせます。