意外と出来がいいぞ:映画『スクリーマーズ』

 フィリップ・K・ディックの短編「変種第二号」を原作とした1995年に公開された映画。監督はスキャナーズ2など(観たことない)クリスチャン・デュゲイ。主演はロボコップでおなじみのピーター・ウェラー。そして脚本がダン・オバノン

 数あるディック原作映画の中では、あまり語られない映画の一つといっていいと思われる本作ですが、なかなか悪くないです。まあでも、84年の『ターミネーター』の衝撃とさらに91年の『ターミネーター2』を通過してしまってこれ、というのは確かに埋もれるのはむべなるかな、という気はします。低予算の後追い映画っぽいですしね……。

 しかし、原作を尊重しつつ、ひねりを加え、そして大衆向け的なエンドの中に不安をこっそりしのばせる、というオバノンの見事な脚本術が、きちんとディック原作映画として成立させています。

 原作の兵器クロ―が自己進化していつしかヒト型兵器となったそれらは、人間と区別がつかない数々の“変種”を生み出し、見境なく人間を襲い始めていく。人間に成りすました変種は誰か、という原作のサスペンスをきっちり組み込んで、殺人マシーンが紛れ込んでいるという「ターミネーター」では味わえなかった人型アンドロイドならではの恐怖をみせてくれます。地味っちゃあ地味ですが、しかし基地が乗っ取られ、大量の子供型変種第三号がわらわらと基地内から出てくるシーンとか、同規格のものがゾロゾロわいて出てくる恐怖感が出ててなかなかいいです。

 ただ、ラスト付近の改変はたぶん賛否が分かれるところでしょう。いかにも大衆映画向きな“愛”の演出とかは、ちょっと唐突感もあって嫌う人もいるとは思いますが、人間に似せる、ということのテーマとしてはアリというか。陳腐かもしれないけど、そこにある葛藤とかは、ちょっとグッときました。

 そして、最後のテディ・ベアの演出とか、恐らくハッピーエンドにしろというプロデューサーあたりからの圧力を受けつつも何とか原作のテイストを守ろうとする矜持のようなものを感じたりして、その辺にもちょっと感じ入ったしだいです。

 まあ全体的に地味目で、ヴァーホーベンの『トータル・リコール』のように異形の独自色で記憶に刻むようなインパクトは薄いかもしれませんが、似ても似つかない作品になってしまうディック原作群の中では、比較的原作を尊重した佳作になっているのではないでしょうか。(まあ、実のところ、『ブレードランナー』や『トータル・リコール』『マイノリティ・リポート』の方が好きな自分としては原作に忠実、ということはそんなに気にするポイントではないのですが)