蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

シンデレラグレイの感想その3、みたいなもの。

 ちょっと滞っていたシンデレラグレイの感想を6話まで。

 三話「信じていいかも」で、トレーナーの北原、そして四話の「今度は勝つ」でベルノライトの関係性というか、それぞれの役割のようなものが生まれる形になりました。北原はトレーナーとして走る技術を、そして実家がスポーツ店というベルノライトは走るための靴をオグリに与えます。ベルノライトはお金持ちの親友ポジというか、けいおん!の紬ちゃん枠か(靴のお金は北原トレーナーが払ってたけど)。

 全体の話としては5話までレースが続く中、一話一話無駄なくキャラクターとの接点を作っていますね。そして、5話でついにライブ回が……。ありましたね、ライブ。そしてこれもまた、オグリの同室設定だった不良風三人娘の一人、実は家がダンス教室のノルンエースとの接点を作る回として機能していて、事実のレースにページを割きつつも実にそつがないというか考え抜かれた構成で感心します。

 そして、第六話でフジマサマーチと初めて言葉を交わし、彼女が語る「頂点」について意識するオグリ。第四話でただ走るから走っていた少女が目の前のウマ娘に負け、血が出るほど拳を握りしめて悔しさを自覚し、その彼女から目標を問われる。

 ほんとに教科書ともいえる端正な構成というか、この辺はさすが脚本担当の杉浦理史氏という感じです。もちろん、それを漫画表現に落とし込んでいる久住太陽氏の画面構成力もすごい。大ゴマとか一枚絵のインパクトもすごくて、オグリの怪物性をすさまじい踏み込みの足跡で示したり、目標を意識する六話の眺望だったりと絵でもきちっと物語を魅せてくれます。

 あと、なんといってもレースの臨場感というかキャラクターの表情が素晴らしいです。フジマサマーチのカミソリみたいな表情や血走った瞳、特に瞳の表現がすごくて、オグリの澄み切っているけど、どこか底が知れない深淵のような瞳の力は、この漫画家だからこその漫画表現という感じでとても良い。

 もちろん、その圧倒するようなシリアスな表情と日常の少し抜けたギャップが醸し出すオグリの表情も楽しい。とはいえ、六話とかだと普通の表情も結構可愛らしくなっていたりするのですが。アスリート的な部分がアニメのウマ娘よりもかなり強く出ているので、カッコよさがめちゃくちゃあふれている分、ふとした時にちょっと出てくる可愛らしさみたいなのがよけい可愛く見えます。塩ふったスイカみたいな塩梅ですね。

 しかし、きちっとライブ出してきましたね。そしてそれが、レースレースで緊張してた物語をオグリのカサマツ音頭でいい具合にほぐしてきましたし、上手く使っています。他のキャラクターとのレース外での繋がりとか、オグリのキャラクター性を深めたりとか、ライブの存在ってウマ娘としての物語を広げるためにはかなり重要なんじゃないのかなー、とやはり思いましたね。

 さて、目標を意識したオグリが果たしてレースに対してどう変わっていくのか、そしてまわりのキャラクターとどう関わっていくのか、次の話も目が離せません。

 事実のレースを追うだけでなく、きちんと物語としての広がりが出てきて、回を追うごとに面白くなってきてますので、毎週とても楽しみです。