蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

ヘンはヘンだが楽しい:映画『サイン』

 『ジョーカー』の予習というかなんというか、ホアキン・フェニックスの映画を観とくか、みたいな感じになり、いまさらというチョイスですが未見だったこれを観てみました。自分にとってホアキン・フェニックスは、『グラディエーター』のシスコン皇帝なんですが、この映画もまた、微妙に何とも言えない狂人感が滲んでて、よかったような。映画はシャマランです。それ以上なんかいう事あるの?

 ……一応、感想いきますが、相変わらずの端正な構図とカメラワークというかなんというか。小津をミリ単位で意識しただけのようなカメラは、役者がじっとこちらを見てきて、テレビをじっと見てる人を見返してるような間の抜けた空気。それは狙ってるのか何なのか。ミステリーサークルで宇宙人、そんな陳腐なネタを何のひねりもなく端正に捉えてゆくカメラが、妙な笑いを生む。特にホアキンのあれこれなシーンは笑えます。何なんだよこの映画は。そしてこのホアキンがいるからこそ、最初から最後までクソ真面目なメル・ギブソンにも可笑しみが漂い始めています。宇宙人に染まる家族をクソ真面目な戸惑い顔で見てる姿はマジで面白いです。

 個人的に好きなシーンは、子どもたちがテレビの前で宇宙人に興奮してる中、奥のソファーで並んでぽかんとテレビ見てるホアキンとメルギブです。めちゃくちゃ笑いました。

 メルギブ含めてキリスト教原理主義に対する壮大なジョークなのか、はたまた本気に信仰の物語なのか、マジで良くわかんない所も「笑うしかない」みたいな感覚に繋がっているような気がしますね、はい。

 全体的に可笑しさがすごいんですが、とはいえ、サスペンス演出も妙に生真面目というか、きちんとツボを押さえていて、サスペンス映画としての目の離せなさはちゃんとあります。そこもなんか奇妙な感じもしますが、その辺は『ヴィジット』と通じるところがありますね。

 決してつまんない映画ではない。変ですが一応、楽しく観れる映画ではあります。まあ、怒る人が多いのは分かる気はしますが。