蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

 五月一日、ファーストデーだからということで、映画三本見てきた。セコイので安い日まで待っていたのだ。

 とりあえず一発目は『シェザム!』だったわけだが、なんかあんまりノれなかった。というか、なんかもう、個人的にスーパーヒーロー物に食傷気味なのかもしれない、ひどく疲れた。お話は分かるけど、もはや定型的過ぎて、もうちょっとなんかないの、みたいな。この作品のヴィランは主人公の裏面としての悪役、主人公側を肯定するためにある悪役で、存在自体は退屈なんだけど、実は私はこっちの方が興味深かった。だいたい、勝手な都合で呼び出されてちょっと誘惑されたら即否定で落伍者扱い、そんでバカげた妄想じみた体験を四半世紀ほど追い続けるのである。しかも一人で。それを想うとなんか泣ける。家族からも理解されない妄想を一人追い続けるというのは、物語を紡ぐ側のある面だと思うんだけど、そこに無頓着であっけらかんと悪として扱っちゃうのって、映画制作陣はよっぽど幸せな人たちなのかもしれない。……まあ、設定したテーマに囚われてるだけなのかもしれないが。ギャグはメタ的な笑いというか、頭では面白いんだろうなとは思いつつ、ゲラゲラ笑うには至らず、ちょっと冷めていた部分もあった。あと戦闘シーンがあんま面白くないよ。なんかダラダラぶつかり合ってて、能力生かすようなシーンも特にないし。まあでも、一面的というかくっきりパッキリしすぎているにせよ、家族というテーマできっちりそつなくした構成は(それがいいかどうかはともかく)、上手くできていたと思います。

 次に『ハンター・キラー 潜航せよ』。これはまあ、なんというかエンタメミリタリー映画というか、なんじゃそりゃな設定や展開なんですけど、そういうのはミリタリー的なカッコイイあれこれをするための前提で、リアリティがどうたらとかはどうでもいいのです。雷雲のなかパラジャンプでロシアに潜入する特殊部隊員やらロシア原潜との潜水艦バトルや機雷原、駆逐艦から発射されるミサイルで凹む船体、浸水、圧壊の恐怖(はそこまでないけど)艦長同士の国を越えお互いを認め合う姿、みたいなミリオタがみたい定型シーンを詰め込みました、という要するに架空戦記映画なので、そういうのが好きなら楽しめるんじゃないかと。第6艦隊とか、ロシア北方艦隊がずらっと並んだ絵とか、対決する駆逐艦が、助けたロシアの老艦長にかつて鍛えられた部下たちだとか、そういうアガる要素がちりばめられていて、「軍隊モエモエ映画」って感じでした。

 最後は『バイス』です。クリスチャン・ベールの肉体改造が話題にもなっているんですが、ええー、マジかよってくらい凄いです。あの体形を「作る」んですからね……すさまじい。まあ、そこはそれとして、あのディック・チェイニー副大統領を描いた評伝映画。9.11を経て何故イラク戦争へ至ったのか、そこをユーモアを交えて描いた140分(長い……)。なんというか、権力はドラッグということなのか。自分だったらお飾りで金もらえるんだし、わざわざあれもこれも副大統領でやろうなんて思いませんけどね……まあ、それは権力とはみじんも縁のない衆生の考えにすぎないのか……。あれで関係ないとこで何十万人も人が死んだと考えるとぐんにゃりなりますね。あと、「本店」に遅れて「支店」で似たようなことが起こってるのがよく分かります。ていうか、やり方パクってるんじゃないの。アメリカ様を十年くらい遅れて追いかけてるわけで、まだ現れていないトランプみたいなやつが遅れて登場するのかなあ、と思うとゲロ吐きそうですね。権力者のために心臓を奪われる人の姿はブラックすぎる未来というか、現在というか……。

 まあ、そんな感じで疲れる映画鑑賞デーでありました。