蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

これで終わりなのか、カーペンター? :『ザ・ウォード監禁病棟』

 ジョン・カーペンターの(今のところの)最新作。

 記憶を失い、農家に火をつけたところで逮捕された少女、クリステンが送られたのは精神病院の監禁病棟。そこには彼女と同じくらいの少女たちが入れられていて、退院するのを待っている。そんな病棟の日々の中、クリステンの身の周りに何か得体の知れない影がちらつき始める。やがてそれは少女たちを襲い始め、クリステンはこの奇妙な監禁病棟から抜け出そうと試みるのだが……。

 まあ、そんな感じのストーリーです。一応、どんでん返しが組み込まれてるのですが、正直、観てたら速攻で分かるオチだと思います。2010年に二十年くらい前のネタを持ってくるあたり、さすがカーペンター(?)ということなのかなんなのか。

 とはいえ、今さらなオチは別にいいんです。狭い空間に押し込められ、自分たちを監禁する生身の人間と襲い来る異形の存在という風に二重の形で追い詰められていくというシチュエーションのおかげで始終緊張感がある。脅かし方、来るぞ、と身構えさせてすかし、ほっとさせて別方向からガツンと来る、そんな古典的な緩急はさすがの巨匠、といったところでしょうか。その辺かなり生真面目なので、慣れたらタイミングが分かるくらいなのですが。

 しかし今回、こんなにも登場人物を10代くらいの女の子で撮るのはカーペンターとしては初めてなんじゃないでしょうか。そこはちょっと新鮮です。そして、その関係なのか画面にどことなく美しく撮ろうとしているような気がしなくもないです。ぶっきらぼうさやいつものシンセの音楽はかなり控え目。特に音楽はなんかすごく堪えてるようなものがあって、いつものベンベン節を期待するとあれ? という感じ。

 その美しい画面はカーペンターファンを公言する監督デヴィット・ロバート・ミッチェルの『イット・フォローズ』(こっちもティーンの女の子が主人公)が音楽含めてカーペンターがそういうの撮ったら、という達成をかなり高いレベルで成し遂げたため、今さらこっちを見てしまった自分としては何とも言えない気持ち……。

 出来は悪くないけどすごくフツーな感じ。これで終わっていいのか、カーペンター? みたいな思いがしてしまうのでした。