蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

ゾンビ映画? いやミステリ映画だ! 映画『カメラを止めるな!』

 まあ時間もたったし、ある程度ネタバレでいきますね。

 

 ようやくあの話題の映画『カメラを止めるな』が我が地元で(地方の悲しみ)も公開され、行ってきましたよ。確かにこれはなるべくネタバレ回避で観に行った方がいいかもしれない。ただ、実のところこの映画は、ネタが割れてからが真骨頂ともいえるので、知ってから観た方が楽しめる気もします。二度三度と楽しめるし観たくなる、そんな映画だと思いますね。とりあえずもう一回は観に行こう。

 確かに前振り長いのはそうなんですよ。そこで期待したほどじゃないな……という感じでそのままずっと行っちゃう可能性は無きにしも非ず。でも、壮大な前振りの後のじっくり溜めに溜めたそれがパズルのピースのようにピタピタ嵌ってゆく感覚はとても気持ちよく、そしていちいち面白い。その怒涛の伏線回収やダブルミーニングの快楽はミステリのそれに近いです。そういうわけで、ミステリ好きとしてはなんだろこれ……と観ていたら、その本番に入ってからの展開にはニコニコしっぱなしでした。ミステリ好きはぜひ観るべきです。また、役者さんの演技も最初と最後で違って見えて、その二重化された演技にもなかなか目を見張るものがあります。なにげにすごい。

 この映画はその伏線やダブルミーニングがことごとく現場での混乱、番組の企画上、カメラを止めない様に右往左往するあれやこれやにつながっていて、前半のグダグダな間にすら理由があったりして、それがいちいち面白く、かつ奮闘する監督をはじめスタッフたちの姿に手に汗握り、応援したくなります。そしてその気持ちが、やがて監督の全力でものを作る姿に入りこんでゆく、という観客の気持ちの導線が見事で、ただ伏線回収が見事な映画ってだけでなく、妥協してばっかりだった男が、父親とは真逆の、妥協したくない娘のサポートで、ショボいはショボいなりに自分の作品を全力で作り上げる、という一本筋の入った映画になっていて、ある意味骨のある映画となっています。家族映画であったりもしますね。お父さんと娘の映画。最後の写真はその作品が父と娘の合作である、ということを簡潔に表してましたね。そういう感じで色々と楽しめるポイントが盛り込んであり、ブログタイトルにミステリ映画だ! なんて書いてますが、まあそれだけじゃないよ、ということを最後に述べて筆を置こうと思います。

 ※どうでもいいですけど、序盤の手持ちカメラ画面は結構酔う上、食べ物の臭いとなんだかよく分からない臭いがミックスされた臭気でかなり気分悪くなって、マジで吐きそうでした。手の先が冷えて頭痛と吐き気で序盤は相当つらく、そういう意味でももう一回行かないと。しかし、映画館は結構食べ物の臭いで気分悪くなること多い……。