蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

走るだけでも十分面白いアニメ、その名は『ウマ娘 プリティーダービー』

 『宇宙よりも遠い場所』『ゆるキャン△』という傑作も終わり、今現在、アニメは何を観てるかというと『ウマ娘 プリティーダービー』『メガロボクス』『ルパン三世Prt5』を観てます(『BEATLESS』も引き続き観てます)。

 中でも特に個人的に来てるのが『ウマ娘 プリティーダービー』なんですね。残すところあと一話とほとんど終りに来た今、さぼりにさぼり、ようやくの更新として、このアニメについて書くことにしました。

 ていうかこのウマ娘というプロジェクト、けものフレンズJRAとコラボした時に、そのプロモみたいなのをなんとなく目にした時があって、その時は、流行りに乗っかったような競走馬の美少女化プロジェクトか、みたいな感じで半笑いしてたんですよ。内容もなんかちょっとやなローアングルとか、内股気味の走りとか、無理して突っこんだような百合っぽい描写とかあって、ちょっと見て興味をなくしたんです。

 で、アニメのほうもtwitterのTLにちらちら上がるだけで、あ、今やってるのかぐらいだったんですが、競馬好きっぽいフォロワーさんが結構熱心に観てるっぽいのでちょっと興味をもって一話を観てみたのでした。

 最初は唐突なライブとかにやっぱり戸惑ったというか、なんか変なアニメだなーぐらいの感想だったんですが、最初に観たPVとは雰囲気が一変してて、観て嫌っていう感じはなく、変に媚びてもいなかったので、なんとなく続きを観ていくうちに次第にハマったという感じでしょうか。

 レース結果とかウマ娘たちの細かい設定は事実を基に構成されているみたいなんですけど、それを特に知らなくても、普通にスポーツものとして楽しめて、イロモノな見た目からすると意外にも素朴な味わいみたいなのが個人的にはクセになる感じでしたね。

 そうなんです、競走馬の美少女化+アイドルライブという一見イロモノ的な見た目にしては展開やキャラクターの性格など、実のところ素朴なんです、このアニメ。凄い外連のある、予想外の展開とかオタク好みの細かな裏設定を小出しにしたりとか、裏表のあるキャラクターの複雑な関係性とかがあるわけじゃないですし、どちらかというと感情の機微や人物同士の距離感を真っすぐに描く感じで、展開も素直な一本道のストーリー。その辺は『宇宙よりも遠い場所』(はサブで表裏の複雑な感情を持つ人物がいたりしますが)や『ゆるキャン△』に連なるアニメといえます。あと、大人たちがいい味出してて(特にトレーナー)そこもまた、近い感じがしましたね。

 アニメーションにしても、アニメだからみたいな過剰さや外連味のある超人アクションって感じじゃなくて、演出も古典的で丁寧。隠された裏読み設定みたいなのも最初のナレーション以外は皆無。一応ウマ耳の女の子が凄い速さで走るということ以外は陸上競技的な枠内に収まってるんですよ。女の子がめっちゃ必死にガチ走りする(+申し訳程度のライブ)、そんだけ。でもそんな彼女たちの“走り”にすごく引き付けられるんですね。

 走る、という所をきっちり、しかも豊富に描いてきてくれていて、走るという、ある意味アニメーションの原点というか、アクションの原点みたいなことをここまでじっくり描くアニメ、鑑賞できるアニメってそうそうないような気がします(まあ、私が知らないだけという可能性も大いにありますが)。競走馬、というモチーフを擬人化したからこそできた面白さといっていいのではないでしょうか。

 もちろん、走る以外にもキャラクターごとの現実のレースや生涯を知ってから見る楽しみや、そこかしこにちりばめられた小ネタやキャラクター同士の掛け合い、シリアスな中に適度に挟まれるギャグの緩急といった要素も素晴らしい。

 あと、彼女たちがG1レースで着る特別な勝負服がカッコイイんですよ。特にエルコンドルパサーグラスワンダーたちのゾロッとしたコートっぽい服装で突っ走る姿は特にかっこよくて好き。

 それから、やっぱり、キャラクターたちがみんな勝ちたい、という気持ちを前面に出してくるところがいいんですよね。所属チームのなかでみんなでわちゃわちゃするだけじゃなくて、チームは個人を高め合う場としてある。そうやってそれぞれがそれぞれのレースを勝ちに行く。そして、チームを越えて、相手をリスペクトする姿勢。そこを外さないことが、スポーツものとしてすじを通している大きな要因なのではないでしょうか。

 とにかくあと一回で最後(まあ、12話で実質的な最終回は迎えましたが)。最後まで彼女たちの走る姿を見届けようと思います。