蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

『屍人荘の殺人』の快進撃を見つつ、ほんとすごい新人が現れたなあ、と。本格ミステリ30周年にして斯界に力のある新人が現れたこのインパクトは、綾辻行人を思わせるものがあり、作品のもたらしたその手があったか、の衝撃も氏を重ね合わせるところがある。そしてさらにロジックもトリックもド直球の本格ミステリのテイストで、それがここまで多くの読者を獲得しているという事実は何よりも素晴らしいことだ。

屍人荘の素晴らしいところは分かりやすい、もしくは共有したくなる“驚愕の真相”という飛び道具的な仕掛けがメインではなくフックであるところだ。それ自体はコロンブスの卵ではあるが特に瞠目するようなネタではない。しかし、それをもって本格ミステリのロジックとトリックを成立させ、何より面白い物語として過不足なく語り切ったことにある。

本格ミステリというものが分かる人間たちのものではなく、そのクオリティを保ったままでも多くの人を読者にすることができる。面白がらせることができる。それを新たに示してみせた、それが私には何よりうれしいのだと思う。

あと、かなりどうでもいいが第27回鮎川哲也賞には私も初めて書いた作品を応募していて、まあ、最終選考に残れなかったので、大したことはないのだが、すぐ近くに名前が載っていたのはちょっといい記念になった。と同時に少し奮起するというか、面白い探偵小説が書きたい、という思いが沸いてきた(実は最終に残れなかったのは結構ショックだった……選評、欲しかった……)

頑張ろう。