蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

映画

だだっ広い孤独:映画『荒野にて』

確かにわれわれ人間は弱く、病気にもかかり、醜く、堪え性のない生き物だ。だが、本当にそれだけの存在であるとしたら、われわれは何千年も前にこの地上から消えていただろう。 ――ジョン・スタインベック 孤独の風景。そのイメージはどんなものだろうか。部…

炎とその一瞬の静けさ:映画『プロメア』

CGアニメの一つの到達点といっていいのかもしれない。素晴らしいアクションが、アニメーションの“動き”の快楽が横溢している映画であり、早くも今年ナンバーワンのアクションアニメ映画が出てきちゃったかもしれない……というと気が早すぎるかもしれませんが…

ヒーローなんかじゃない:映画『タクシー運転手』

ヒーローでも何でもない男がいる。彼は貧しいタクシー運転手で、家賃を滞納しつつ娘と一緒に暮らしている。その日を生きるために働いている、ごく普通の男だ。初めはただ、支払いのいい外国人を乗せる仕事を耳にし、それをかすめ取って一儲けしようとしただ…

映画という鉤爪:映画『マッドボンバー』

マッドボンバー [Blu-ray] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 2018/05/09 メディア: Blu-ray この商品を含むブログ (1件) を見る 決してものすごく細部まで作りこまれた作品ではないのだけど、強烈で忘れがたいものとなる、そんな映画がある。この作…

のっぺりとした絶望の世界で:映画『太陽を盗んだ男』

DVD観て、そういえば昔、こんなの書いてたなというのを思い出したので。 『太陽を盗んだ男』――。長らくカルト的な扱いを受け、映画好きたちがひそかに、しかし脈々と語り継いできた伝説の映画は、やがて多くの支持を得てオールタイムベストなどの常連となる…

それは、過去の希望の姿:映画『イカリエ₋XB1』

イカリエ、なんだか不思議な語感。聞きなれないこの言葉は、旧チェコスロヴァキアの映画のものだ。 1963年。鉄のカーテンの向こう側で、『2001年宇宙の旅』(68年)に先駆ける形で生まれたSF映画。そしておそらくキューブリックのそれに何らかの影響を与えた…

本当のプロパガンダは「怖く」ない:映画『NO』

NO (ノー) [DVD] 出版社/メーカー: オデッサ・エンタテインメント 発売日: 2015/04/02 メディア: DVD この商品を含むブログ (6件) を見る プロパガンダ。その言葉で何が思い浮かぶだろうか。いかめしい指導者の肖像画やポスターが学校を始めとする公共施…

暗くてしんどいよ:映画『湿地』

“社会派ミステリ”ってやつの褒め方って、結構聞いてるとイラっとしません? 私はめちゃくちゃイラっとします。これぞ読み応えのある小説とか、重厚とかやたら言ってきて、だからなんだよ、みたいな。重々しければ小説としての価値が保証されるのでしょうかね…

幻想は地べたを這いずり始まりを目指す 映画『ガルム・ウォーズ』

久しぶりに観たんで。あ、一応ネタバレで語るので注意です。 『ガルム戦記』――プロジェクト『G.R.M』。押井ファン、特に長年のファンには思い入れがあるタイトルだろう。そのパイロットフィルムを見て、日本がハリウッドを凌駕するSF超大作を世界に問う「幻…

生真面目でヘンな映画:映画『ヴィジット』

なんていうか、映画秘宝界隈でのシャマランへのアツい掌返し、というそーとー胡散臭い光景をしばしば目にする今日この頃。というわけでそういえばそんな監督いたな、という気分で久しぶりに手に取ったのです、M・ナイト・シャマラン監督作品というやつを。ま…

その瞬間、あなたはそこにいる:映画『ファースト・マン』

『ボヘミアンラプソディー』の感想を書いたときに、体験する装置としての映画がこれから増えていくだろうということを書いたが、この映画もまた、観る者にその過去の瞬間を体験させる映画である。「ボヘミアン」以上に徹底した体験追及型で、物語性や人物か…

恐怖のチキン:映画『キラー・スナイパー』

Killer Joe メディア: DVD この商品を含むブログを見る というわけで、またもやフリードキン映画である。2011年公開の最新作で、ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞にノミネートされたりした、久々に脚光があたったフリードキン映画である。内容は……いつもの…

帰ってこれなくなった男:映画『ハンテッド』

ハンテッド [DVD] 出版社/メーカー: 日本ヘラルド映画(PCH) 発売日: 2005/07/06 メディア: DVD クリック: 22回 この商品を含むブログ (15件) を見る 恐怖の報酬に感動したということもあり、今回もフリードキンの映画である。この映画は観てなかったので、ち…

生きながら死んでいる男たちの:ウィリアム・フリードキン『恐怖の報酬:オリジナル完全版』

映画ファンの中では伝説ともいえるウィリアム・フリードキンによる『恐怖の報酬』。そのオリジナル完全版を観てきました。ネタバレ前提的に語るので、まあそのつもりでお願いしますです。 『恐怖の報酬』――もともとは1953年製作のアンリ⁼ジョルジュ・クルー…

「体験」を再現する装置としての映画 『ボヘミアン・ラプソディ』

というわけで、新年初の映画はこれでした。おまけに恐らく人生初のIMAXで観た。ぶっちゃけ、同行者との時間の都合でIMAX字幕しかなく、えー、高い、みたいな感じで劇場に乗り込んでいったのですが、いや、観てよかったです。というか、これはIMAXで観るべき…

映画『遊星よりの物体X』感想

『遊星よりの物体X』、である。カーペンターの『遊星からの物体X』ではなく。 今となってはカーペンターのリメイク元として有名という感じの51年作品、そして製作(演出の大部分も担当したとされる)はあのハワード・ホークス。 ていうか、ハワード・ホーク…

狂ったケモノが見通す視線 映画『狂った野獣』

町山智博氏と春日太一氏が語る東映時代のエピソードの中で、渡瀬恒彦最強伝説という話があり、、その伝説の一つとして挙げられて、ずっと観たかった映画。ようやく、見つけてきて鑑賞しました。いやー、なかなかすごかったです。 渡瀬恒彦っていうと、私は十…

ゾンビ映画? いやミステリ映画だ! 映画『カメラを止めるな!』

まあ時間もたったし、ある程度ネタバレでいきますね。 ようやくあの話題の映画『カメラを止めるな』が我が地元で(地方の悲しみ)も公開され、行ってきましたよ。確かにこれはなるべくネタバレ回避で観に行った方がいいかもしれない。ただ、実のところこの映…

破壊する先に何があるのか 映画『スター・ウォーズ エピソード8:最後のジェダイ』

ようやく観ましたよスター・ウォーズエピソード8を。 まあ、もう時期も時期だしネタバレで語っていくんでそこはよろしくです。 公開後にその“破壊”を許容するかどうかの姿勢がこの映画の“前進”“革新”を受け容れる者とそうでない者、みたいな分断が広がって…

根無し草の怪物 映画『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

黄色いМの文字――それだけで分かる店がある。 マクドナルド。 世界で初めてレストランを効率化し、30秒でハンバーガーを出すハンバーガーショップの代名詞。そしてフランチャイズ化することにより、アメリカはおろか、世界のあまねく地域でその黄金色のダブル…

これで終わりなのか、カーペンター? :『ザ・ウォード監禁病棟』

ジョン・カーペンターの(今のところの)最新作。 記憶を失い、農家に火をつけたところで逮捕された少女、クリステンが送られたのは精神病院の監禁病棟。そこには彼女と同じくらいの少女たちが入れられていて、退院するのを待っている。そんな病棟の日々の中…

家族であろうとすることができない場所で 『万引き家族』感想

観てきましたよ、『万引き家族』。是枝監督の作品は、これまでは『それでも僕はやってない』ぐらいしか観てなくて、今回でやっと二作目。そして今作も「それでも~」と同じように、すっきりとした終わりではなく、どこか遣り切れない。映画の終りが終わりで…

エロスとデスは兄弟 映画『イット・フォローズ』感想

デヴィッド・ロバート・ミッチェルというほとんど無名の映画監督と、キャスト、そして二百万ドルの低予算で作られたこの映画は、大した宣伝もなかったにもかかわらず興行収益二千万ドルをあげ、2014年のホラ―シーンの話題をさらった。 この映画は殺人鬼や悪…

『地獄の黙示録』

結構前なんですけど、午前十時の映画祭で観てきましたよ。そしてこれが初めの『地獄の黙示録』だという。 なんかすごい……んだけど、同時に妙にチグハグ感というか、前半のノリノリなドンパチから次第に鬱っぽい閉塞感を経て、何だか妙に煮え切らない形で幕を…

『悪魔のいけにえ2』

同じ監督が同じ題材で続編を撮る。まあ、割とよくあるシチュだ。その場合、第一作の再演となるわけだが、それをどのように再演するのか。それが映画の形を決めるのかもしれない。 基本的に人気が出た作品の二作目は予算が増えるわけだし派手になる傾向がある…

決断せよ:『ペンタゴン・ペーパーズ』

いろいろタイムリーといいますか、どこもかしこも腐り切った世界で、映画の神様が掲げた力強いプロテストは鮮烈で、まだあきらめるには早すぎる、そんなふうに勇気づけてくれる映画でした。 まあ、政治的な意味合いは言うに及ばず、普通に主婦として生涯を送…

意外と出来がいいぞ:映画『スクリーマーズ』

フィリップ・K・ディックの短編「変種第二号」を原作とした1995年に公開された映画。監督はスキャナーズ2など(観たことない)クリスチャン・デュゲイ。主演はロボコップでおなじみのピーター・ウェラー。そして脚本がダン・オバノン。 数あるディック原作…

恐怖に克て:映画『IT』

年を越してようやく観に行きましたよ。というか、ようやく観に行けたというべきか。 本作はスティーブン・キングによる傑作小説の二度目の映像化――その一番初めの映像化であるテレビミニシリーズ版を観たのは小学生の時でした。 父親と何の気はなしにぼんや…

まっかな終末:『吸血鬼ゴケミドロ』

私がクリスマスも終わろうとしていた深夜、何をしていたのだというと映画を観ていた。タイトルは『吸血鬼ゴケミドロ』。 例のごとく観なきゃなあ、と思いながら積んでいた映画の一つ。ようやく観ることができましたよサンタさん。 ゴケミドロの話はシンプル…

バラエティなホラーとして

そう言えばちょっと前に『パラノーマル・アクティビティ』をようやく観たんですよ。ほとんど個人で作ったような超低予算映画で大ヒットしたというアレです。まあほんと今さらですね。 警察が押収したビデオテープ――そこには死亡した持ち主が遭遇した怪現象が…