蒼ざめた犬

齧ったフィクション(物語)の記録。……恐らくは。

ここ最近読んだミステリの感想をざっと上げていこうかな、と。結構避けがちなミステリ感想ですが、そこそこ読んでて、感想書いてないのが溜まってきたので。まあ、軽く触れる程度に。 電氣人閒の虞 (光文社文庫) 作者:詠坂 雄二 出版社/メーカー: 光文社 発…

舞阪洸『彫刻の家の殺人―御手洗学園高等部実践ミステリ倶楽部〈2〉』

御手洗学園シリーズ第二弾。今回もまた、実にストレートな本格もので、登場人物表に見取り図に、読者への挑戦もついております。 クオリティも前作に勝るとも劣らない秀作なので、こちらも本格好きにおススメしたいですね。 今回は長編ということで、結構ゆ…

富士見ミステリー文庫の隠れた良作:舞阪洸『亜是流城館の殺人―御手洗学園高等部実践ミステリ倶楽部』

かつて富士見文庫にはラノベのミステリーレーベルという存在があった。富士見ミステリー文庫。自由な形で様々な快作珍作含めたライトノベルミステリが生まれ、そして消えていった。そんななかで、本格ミステリとしての結構を備えた作品も多数刊行されていた…

島田荘司:御手洗シリーズ作品紹介 その1

一応、今のところ御手洗潔シリーズは、ほぼほぼ全部読んでると思うので、その登場作品を出来る限りというか、根気が続く限り刊行順で紹介していこうかと。まあ、マニアながっつり批評みたいなのはムリなので、軽いファンの思い出話まじりの紹介文です。……ま…

誰かの物語が私という物語を作る:エリック・マコーマック『パラダイス・モーテル』

初マコーマック。全編これ奇譚という感じのエピソードが横溢していて、とても良かった。そして物語というものを巡る物語というか、そんな構造の物語であり、それが急に雲散霧消してしまうその作者の騙りというか、書きぶりにも唸らされる作品でした。 なんと…

学生アリスシリーズの思いで。

そういえば、有栖川有栖の学生アリスシリーズについて少し語りたい。 中学から高校にかけてのことだったと思う。当時探偵小説に飢えていた。小学生の時に乱歩に出会って、探偵小説にのめりこんでいたわけだけど、ホームズ、ルブラン、ヴァンダインの『カブト…

消えないニオイ:映画『パラサイト 半地下の家族』

『パラサイト 半地下の家族』を観てきたので、とりあえずその感想を。ちょっと内容に触れたりするので、観てない人は観てから読んでください。あらすじは略。 なんていうか、キツイ映画だった。別に面白くないというわけではない。映画としてはとても面白い…

なんだかんだで二〇一九年も終わり、この感想文やら雑文やらの集合体も三年近く続きました。とりあえず百記事書けたらということで始めて何とか書き切りましたし、二百くらいいったら終わってもいいんじゃないかと思ってたりしてますが、とりあえず何らかの…

素晴らしい実写化:映画『夏、19歳の肖像』

島田荘司の映像化は、本邦でも近年になって多数作られているのだが、台湾で制作されたこの『夏、19歳の肖像』がたぶん一番いい出来だろう。原作を基本としながら、現代の話としてスマートフォンを有効活用し、サスペンス性やミステリ性を底上げして、原作の…

彼らが“ぼくら”になる7日間:映画『ぼくらの7日間戦争』

宗田理の『ぼくらの七日間戦争』といえば、ジュブナイルの金字塔で自分も小学生高学年から中学生の時にこの作品に触れ、シリーズを結構読んだ覚えがある。『ぼくらの魔女戦記』の一巻の最後あたりがたぶん一番好きだ。 このシリーズとズッコケシリーズやかぎ…

物語り続ける、その後姿に。

『白鯨伝説』というアニメを知っているだろうか。一九九七年から一九九九年にかけてNHK衛星第二で放送されたSF冒険アニメで、監督は『ガンバの冒険』や『エースをねらえ』OVA版の『ブラックジャック』などを手掛けた出崎統。タイトルの通り、メルヴィルの『…

あの夏、終わってしまった何かに:映画『Summer of 84』

閑静な郊外。そこには見知った穏やかな人々がいる――そういうことになっている。 しかし、誰もその心の裡を知りはしない。お互いが本心を見せたりはしない中、ふと疑いを抱くとき、そこを覗くことは何を招くのか。 この映画は、80年代のノスタルジックな、し…

魂の行方:筒城灯士郎『世界樹の棺』

恋を成就させたいのに自ら失恋に向かっていく人も……世の中にはいると思うんです。 今年の本格ミステリで一番好きかもしれない。そんな作品に出会えました。まあ、なんというか波長が合う、完全に好みに合致した感じなので、広く勧められるかというと、ちょっ…

狂気が見た白昼夢:映画『まぼろしの市街戦』

まぼろしの市街戦≪4Kデジタル修復版≫ [Blu-ray] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 2019/08/07 メディア: Blu-ray この商品を含むブログを見る 名前は聞いていたけど、観たことがなかった映画。今回、デジタル修復版が出て、気軽にに観れるようになっ…

相反する世界の接触面:半田畔『科学オタクと霊感女』 -成仏までの方程式-

囚われる――人は何かに自分の意志を制限される。それは言葉だったり、過去の過ちや願いや希望だったりする。何かに囚われていることは、自由ではないというふうに見られがちだ。だが、何かに制限されることが、その人を形作っている、その生き方を縁取ってい…

野村亮馬『インコンニウスの城砦』

あらすじ 氷期を迎えつつある惑星。少しでも温暖な赤道面を巡り、世界は北半球と南半球に分かれて争っている。『深い湖」のカロは、孤児院から南半球側の密偵に志願した少年だ。彼は北半球側が建設中の56号移動城砦――その地下工廠に潜り込み、そこで見聞きし…

ライミ印の笑えるホラー:映画『スペル』

サム・ライミ作品。『死霊のはらわた』を観れば分かるが、彼のホラーはきちんとしたホラー演出で驚きつつも観てるうちになんだかドツキ漫才というか、スプラスティックコメディめいた展開になっていき、ついには恐怖よりも笑いが先に来るようになるのだ。 こ…

あらすじって、正直書くのが一番メンドイ部分なのだが、たぶん一番読まれない部分だろう。しかし、何故か書かないと先に進めない気がして、わりとあらすじを書こうと頑張って、そして書きかけのモノがたまっていくのだ……。まあでも、そもそもあらすじを書く…

レオーネという西部劇の思いで。

マカロニ・ウエスタン、結構好きなんですよ。まあ、どのジャンルに対しても言えるんですが、マニア的な取り組みで臨んでいるわけではないので、半可通ではあるんですが、大学生のころに結構ハマって、観てたことがありました。 最初に観たのは、あの三大レオ…

怪奇とトリックが横溢する怪人賛歌:根本尚『怪奇探偵 写楽炎』

探偵小説、そんな言葉聞いて何を思い浮かべるでしょうか。怪奇色にあふれた血みどろの惨劇、異様な姿の怪人、大胆不敵なトリック、そしてそれらに敢然と立ち向かう名探偵。なんというか、江戸川乱歩的な風景を思い浮かべる人ならばぜひ読むべき漫画がありま…

喧騒と静寂、新しい時代と去りゆく者たち:映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』

Once upon a time in the west――むかしむかし、西部で。 『ウエスタン』という邦題で親しまれてきたセルジオ・レオーネの一大叙事詩であります。そして今現在、そのオリジナル版が日本初公開で劇場にかかっているのです。一応、2時間45分版のそのオリジナル…

笑い者が世界を笑うまで:映画『JOKER』

とりあえず、迷っていたら観に行ってほしい。こんなにも笑い声が悲しい映画はそうない。 どこまでも孤独な人間が、ささやかだか自己を規定していたものを少しづつ削られてゆくさまは、別にこの映画に限ったことではなく、“いまここ”にある現実でもある。どこ…

君と僕であなたと私の物語:映画『HELLO WORLD』

『HELLO WORLD』観てきましたよ。イーガンでディックでマトリックスな青春ラブストーリーと言えばいいのか。結果としてはなかなか面白かったです。 とはいえ、やはりイーガンというか、この手の量子力学ガジェットSFは頭がこんがらがる。時間とか空間とか、…

ヘンはヘンだが楽しい:映画『サイン』

『ジョーカー』の予習というかなんというか、ホアキン・フェニックスの映画を観とくか、みたいな感じになり、いまさらというチョイスですが未見だったこれを観てみました。自分にとってホアキン・フェニックスは、『グラディエーター』のシスコン皇帝なんで…

好きなヒーロー映画

ヒーロー映画。ここでは邦画以外のアメリカンコミックを中心としたヒーロー映画、いわゆるスーパーヒーロー物、そのなかで自分が好きな映画を挙げてみたい。 まあ、実のところここ最近はマーベルを中心としたスーパーヒーロー映画ってやつには食傷気味という…

さだめられた結末を見つめる:『さよならの朝に約束の花をかざろう』

ちょっと前に見た映画の話。というか、だいぶ前の話になるが、一昨年はクリスマスに『ゴケミドロ』観たので、今回は『サイレントヒル』を観ようと思ってたんですよ。しかし、家人が劇場で観てすごく良かったからこれを観ろ、泣ける、みたいな感じで勧めてき…

さて、日に日に安っぽい地金をさらして「小さくバカになってゆく©乙事主」島でみなさん元気に生きてますでしょうか。“生きろ”というのも正直勘弁してくださいな感じですが、クソがあふれ切って、いつか窒息するまでは何とか齧ったフィクションの記録とやらを…

そういえば、また新しいアニメが始まりますね。今期もいつも通りというか、やっぱりあんまり観れてなくて『鬼滅の刃』、『彼方のアストラ』、あと『女子高生の無駄づかい』あたりを観てました。「鬼滅」も「アストラ」もよかったんですけど、個人的には「女…

影絵の悪魔:映画『狩人の夜』

人を裁くな。あなたがたも裁かれぬように。 マタイ伝 七章 1955年、イギリスの俳優チャールズ・ロートンが一度だけメガホンを取ったという作品。当時はさして評価されなかったらしいのですが、少なからずの後続の映画人たちに影響を与え、また支持されて、少…

『魔眼の匣』、『Medium 霊媒探偵城塚翡翠』、『紅蓮館の殺人』について、プロット上の共通点をネタバレしつつ触れるので、読んでない人は注意。というか見るな。 ……といっても三作読めば分かることで、大したことじゃないのですが。 この三作、どれも女性探…